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放送内容
森啓次郎エッセイ
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9/14(金)ニュースの視点 No.075
「解散総選挙が近づいた」

 安倍首相が辞任を表明した。その理由として「小沢党首に党首会談を申し入れ、率直な思いを伝えようとしたが、断られてしまった」「局面を転換するためには、新たな総理の下でテロとの戦いを継続していく方がいいと判断した」と述べた。

 一方、名指しされた小沢民主党代表は、「選挙で過半数を失っても辞めず、改造をし、所信表明をし、代表質問の前に辞職と、40年近い政治生活でも初めてのことではないか」と批判した。辞任は極めて唐突で理解しがたいものだった。

 その意味で安倍首相の行動は、松岡農水相の自殺と重なる。じわじわと重圧がかかってある日突然、緊張の糸がプツンと切れてすべてを投げ出した形だ。

 13日、「機能性胃腸障害」で慶応病院に入院した。しかし、内視鏡検査ではとくに重大な異常は見つかっていない。

 自然界では、「最も強いものは、実は最も弱いものである」とよく言われる。最も強いものは、その環境に最も適応しているから強いのであって、環境が激変すると最初に倒れてしまう脆(もろ)さがある。

 辞任の予兆はあった。9日、OPECで訪れていたオーストラリアで、テロ特措法の延長問題をめぐって「給油活動の継続に職を賭す」と発言していた。

 また所信表明演説ではその冒頭で「退陣すべきとの意見があることは十分承知している」と述べていた。

 さらに、参院での演説では原稿を2行分読み飛ばした。そこには「来年開催される北海道洞爺湖サミットで、さらなる前進が得られるよう、引き続き、リーダーシップを発揮してまいります」と書かれていた。すでに辞任を決意していたものと思われる。無意識に、あるいは意図的に飛ばした可能性がある。

 達成できそうにもない約束をして自分を追い詰めてしまったのではないか。対外的には、国際公約と言い切ったテロ特措法の延長、国内的には来年3月までに行うとした年金の照合だ。

 ところで、安倍首相が退陣したからといって事態は何の変化も起きていない。新しい自民党総裁が決まり、新首相が任命されても「ねじれ国会」の現実はそのままだ。新法案が衆議院で可決されても参議院で否決され、衆議院に戻され3分の2以上の賛成で再び可決されることになる。

 小泉前首相は郵政民営化が参院で否決された時、解散総選挙に打って出た。安倍首相も、本当に「職を賭す」と覚悟したならば、テロ特措法の延長の是非を問うために解散総選挙に打って出るべきではなかったのか。安倍政権に欠けていたのは、この思いっきりの良さだ。

 後継首相に譲るだけでは、民意が反映されていない内閣がまた出来上がるだけだ。解散総選挙がこれでぐっと近づいた。政権交代が現実味を帯びてきた。
レギュラー出演者
森 啓次郎
森 啓次郎
「Asahiパソコン」「ぱそ」「週刊朝日」編集長を経て、現在、大学講師(メディア論)。