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放送内容
森啓次郎エッセイ
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6/15(金) ニュースの視点 No062
「ラニーニャが異常気象を呼ぶ」

 ようやく梅雨入りだ。しかし今年の梅雨は短く、「暑い夏」が予想されている。5月頃から「ラニーニャ現象」が起きているからだ。南米ペルー沖の海面水温が下がる現象だ。

 赤道付近にはつねに貿易風と呼ばれる東風が吹いている。この風が強まると海面付近の温かい水がどんどん西の方へ押しやられ、フィリピンやインドネシア近海まで吹き寄せられてくる。そのためペルー沖では海底から冷たい水が広範囲に湧き上がってくる。平年より0.5度下がった状態。これを「ラニーニャ現象」と呼んでいる。

 反対に貿易風が弱まると、ペルー沖まで温かい水が覆うので海面水温が高くなる。平年より0.5度高い状態。これを「エルニーニョ現象」と呼んでいる。

 クリスマスの頃に暖流系の魚を運んで来てくれることから、クリスマスプレゼントにちなんでスペイン語の「神の男の子」、つまりキリストの海流「エルニーニョ」と呼んでいた。のちに反対の現象をアメリカ人学者が「女の子=ラニーニャ」と名付けた。

 ラニーニャ現象によってフィリピン近海の海水温が上がると日本の南の太平洋上に高気圧が発達する。梅雨前線が北上しやすくなり梅雨明けが早まるといわれている。さらに、高気圧が強く張り出すため「暑い夏」がやってくる。

 水不足が心配される。とくに今年の冬は暖冬だったために雪解け水も不足している。中国四国地方を中心に渇水の恐れがある。

 ところで、ラニーニャ現象が起ると世界ではどんな変化が起きるのだろうか。6月から8月にかけて、アメリカのシカゴやニューヨークは高温になり、シアトルやサンフランシスコなど西海岸は低温になる。ヨーロッパでは、デンマークやドイツ北部で高温かつ雨が少なく、オーストラリア東海岸で雨がたくさん降る。

 12月から2月にかけては、アメリカ南部が暑くなり、オーストラリア東部、南米北部、アフリカ南部で大雨が降る。エルニーニョ現象が起きた場合は、おおむね逆の現象が起きている。

 日本への影響は一様ではない。ラニーニャが発生した1984年夏は、猛暑で雨が少なく干ばつ被害が起きた。95年夏は、梅雨前線が活発化し各地で豪雨による災害が起きた。また、89年は東日本で暖冬、2005年は日本海側で豪雪となった。

 地球は極めて微妙なバランスの上に成り立っている。一部の地域の小さな変動が地球規模の大きな異常気象を引き起こす。局地的な高温と低温、干ばつと集中豪雨――しかし、それらが起きるメカニズムは未だに解明されていない。貿易風が強まったり弱まったりする原因すら分かっていないのだ。

 異常気象は農作物や海産物に大きな影響を及ぼすだけに警戒が必要だ。地球温暖化は、エルニーニョ、ラニーニャ現象を頻発化させているとの指摘もある。
レギュラー出演者
森 啓次郎
森 啓次郎
「Asahiパソコン」「ぱそ」「週刊朝日」編集長を経て、現在、大学講師(メディア論)。