6/8(金)ニュースの視点 No061
「消えた住所、浮いた年金」
つい先日、ぞっとするような経験をした。何年も前に買ったマンションのローンを返済し終わった時のことだ。銀行が担保抹消手続きを行うために司法書士を用意した。登記簿に書かれている古い住所を現住所に書き換えるためだ。ところが突然、「司法書士には出来ないので、自分でやってほしい」と銀行が言い出した。
法務局に出向き、担当者と話をしてようやくその理由が分かった。買った時の住所と現在の住所がつながらないのだ。住民票には前の住所が載っているが、前の前の住所は書かれていない。転居後5年間で消されてしまうからだ。買ったときの自分と現在の自分が同一人物なのか、公的文書で証明する手段がなかった。「つながらないもの」を「つなげる」作業は大変な労力がいる。結局、法務局の担当者に「推量」してもらうしか方法がなかった。
不動産の取得とローンの返済、抵当権の抹消と権利証の書き換え、その間の引っ越し・・・誰にでも起きることだ。こうしたことが、土地・建物の所有者を決める現場で日常的に起きていることを知ってびっくりした。
同じことが他でも起きている。誰のものか分からずに宙に浮いている5000万件以上の年金記録だ。1997年、年金者全員に年金基礎番号を割り当てたときに統合されなかったものだ。
安倍首相は「導入した時の厚生大臣は、菅直人さんだ」と責任転嫁したが、宙に浮いたのは年金基礎番号を作ったからではなく、むしろ、すでに宙に浮いていた年金が年金基礎番号を作ったことで初めて顕在化したというべきだ。作らなければ、5年間の時効によってうやむやのまま闇から闇へ葬られていた恐れがあった。
一番の原因は、転職や結婚によって別々の年金番号がそれまで割り当てられていたためだ。制度的欠陥といえる。おそらく社会保険庁内部では、かなり早い段階から矛盾に気がついていたはずだ。それが表沙汰にならなかったのは、責任を取らされることを恐れた官僚たちが故意に隠していたからだと思われる。
消えた住民票と浮いた年金。市民生活に即した制度設計が行政によってなされていないという共通点がある。
年金問題では、領収書などの証拠がない人は第3者機関で認定することになる。過去と現在をつなげる大変な作業が待っている。柳沢厚生労働大臣は1年以内にやると宣言した。これがもし、参院選に勝つための方便に過ぎなかったとしたら、公約違反、詐欺になる。未払い分を全員に支払うのには、単純計算しても10兆円単位のお金が必要になるかもしれない。
ところで、全国に作られた保養施設「グリーンピア」。使われた無駄金は払わずに貯め込んだ年金だったのではないか。「未納問題」とは、「未払い」を隠すための煙幕だったのではないか――考えれば考えるほど、腹が立つ。
つい先日、ぞっとするような経験をした。何年も前に買ったマンションのローンを返済し終わった時のことだ。銀行が担保抹消手続きを行うために司法書士を用意した。登記簿に書かれている古い住所を現住所に書き換えるためだ。ところが突然、「司法書士には出来ないので、自分でやってほしい」と銀行が言い出した。
法務局に出向き、担当者と話をしてようやくその理由が分かった。買った時の住所と現在の住所がつながらないのだ。住民票には前の住所が載っているが、前の前の住所は書かれていない。転居後5年間で消されてしまうからだ。買ったときの自分と現在の自分が同一人物なのか、公的文書で証明する手段がなかった。「つながらないもの」を「つなげる」作業は大変な労力がいる。結局、法務局の担当者に「推量」してもらうしか方法がなかった。
不動産の取得とローンの返済、抵当権の抹消と権利証の書き換え、その間の引っ越し・・・誰にでも起きることだ。こうしたことが、土地・建物の所有者を決める現場で日常的に起きていることを知ってびっくりした。
同じことが他でも起きている。誰のものか分からずに宙に浮いている5000万件以上の年金記録だ。1997年、年金者全員に年金基礎番号を割り当てたときに統合されなかったものだ。
安倍首相は「導入した時の厚生大臣は、菅直人さんだ」と責任転嫁したが、宙に浮いたのは年金基礎番号を作ったからではなく、むしろ、すでに宙に浮いていた年金が年金基礎番号を作ったことで初めて顕在化したというべきだ。作らなければ、5年間の時効によってうやむやのまま闇から闇へ葬られていた恐れがあった。
一番の原因は、転職や結婚によって別々の年金番号がそれまで割り当てられていたためだ。制度的欠陥といえる。おそらく社会保険庁内部では、かなり早い段階から矛盾に気がついていたはずだ。それが表沙汰にならなかったのは、責任を取らされることを恐れた官僚たちが故意に隠していたからだと思われる。
消えた住民票と浮いた年金。市民生活に即した制度設計が行政によってなされていないという共通点がある。
年金問題では、領収書などの証拠がない人は第3者機関で認定することになる。過去と現在をつなげる大変な作業が待っている。柳沢厚生労働大臣は1年以内にやると宣言した。これがもし、参院選に勝つための方便に過ぎなかったとしたら、公約違反、詐欺になる。未払い分を全員に支払うのには、単純計算しても10兆円単位のお金が必要になるかもしれない。
ところで、全国に作られた保養施設「グリーンピア」。使われた無駄金は払わずに貯め込んだ年金だったのではないか。「未納問題」とは、「未払い」を隠すための煙幕だったのではないか――考えれば考えるほど、腹が立つ。
