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森啓次郎エッセイ
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6/1(金) ニュースの視点 No060
「特捜部の狙いは、自殺した松岡農相だった!?」

 農林事業にかかわる2人の人物が相次いで自殺した。松岡利勝・農林水産大臣と緑資源機構の「陰のドン」と呼ばれていた山崎進一・元理事だ。

 5月27日、東京競馬場では第74回日本ダービーが行われた。この日、皇太子が国内競馬を初観戦したが、当然その場にいなければならなかった松岡農相は欠席していた。極めて異例のことといえる。招待状が松岡大臣名で送られていたからだ。

 松岡農相が日本中央競馬会に観戦辞退を伝えたのは25日。おそらくその時点で、すでに自殺を決意していたものと思われる。

 前日の24日には、東京地検特捜部が緑資源機構による入札談合事件で関係者6人を逮捕している。容疑は林道の調査・設計業務をめぐる独占禁止法違反だ。

 緑資源機構は、森林開発公団と農用地整備公団が、小泉改革によって統合され農水省所管の独立行政法人となったものだ。公取委からの刑事告発を受けての逮捕だが、裏には地検特捜部の強い要請があったと言われている。

 地検の狙いは談合システムの全容解明だ。緑資源機構は、農水省や林野庁から天下りを多く受け入れている企業や公益法人に、優先的に業務を回すという「典型的な談合システム」を作り上げていた。しかも、自ら配分表を作り落札金額まで指定していた。官製談合の見本のような組織だった。このシステムを作り上げたのが山崎・元理事だ。

 疑惑は「中山間(ちゅうさんかん)地域」の開発にまで広がっている。「中山間」とは平野の外縁部から山間部に至る一帯のことで、「段々畑」や「棚田」はその典型的風景といえる。松岡大臣の故郷・熊本県阿蘇市はまさにそうしたところにあった。

 事実、総事業費270億円の「特定中山間保全整備事業」は、熊本県の「阿蘇小国(おぐに)郷地域」、島根県の「邑智(おおち)西部区域」の2カ所で行われている。25日、地検特捜部は小国郷の現地事業所を捜索している。

 もう一方の島根県は、松岡氏が遺書を宛てた一人、親戚の景山俊太郎参院議員の地元でもある。

 「東の宗男、西の松岡」と呼ばれていた。農林、建設業界から幅広く資金を集め、政治資金パーティーも盛んに行っていた。とくに談合に参加していた受注業者からはこの6年間に3250万円の献金を受け取っていた。仲介役として暗躍していたのも山崎・元理事だった。

 地元への利益誘導、受注業者へのパーティー券押しつけと献金。捜査対象がやがて自分に及ぶことを、松岡農相は感じ取っていたのではないだろうか。
レギュラー出演者
森 啓次郎
森 啓次郎
「Asahiパソコン」「ぱそ」「週刊朝日」編集長を経て、現在、大学講師(メディア論)。