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放送内容
森啓次郎エッセイ
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5/18(金)ニュースの視点 No058
「憲法第9条2項に挑む国民投票法」

 国民投票法が成立した。正式には「日本国憲法の改正手続きに関する法律」。施行は公布から3年後、つまり2010年5月だ。それまでは改正案を国会に提出できない。

 この法律は、憲法第96条に書かれている改正の手続きを具体的に定めたものだ。最も重要な点は、「国民投票の過半数」を、何をもって過半数とするのかという点だ。極端にいえば、投票率10%でも成立させるかどうかだ。

 この最低投票率については持ち越しとなった。憲法審査会で3年後までに検討するとしている。しかし、自民党案でも民主党案でも最低投票率の規定はなかったことから、定められないままになる可能性が高いといえる。

 また、過半数は無効票を除いた有効投票数の過半数とされた。最低投票率を定めないとすれば、考え得る最も少ない賛成で憲法が改定できる構造になっている。白票が増えれば増えるほど過半数が下がるからだ。どこか姑息な感じを持つのは私だけだろうか。憲法改正は堂々と行うべきだ。

 ところで、投票は互いに関連する項目に分けて○か×を書くことになる。項目の立て方によっては、かなり迷う人が出てくる可能性がある。例えば、自衛隊を自衛軍にすることには賛成でも、海外派遣については反対の人はどうするのか。あるいは、平和部隊としての海外派遣に賛成でも、集団的自衛権の行使に反対の人はどうするのか。迷った末に白票が増えることが十分考えられる。

 安倍首相は並々ならぬ改憲の意志を示している。2005年に作られた自民党新憲法草案をもとにすると述べている。挑む相手は憲法第9条2項だ。

 「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」。現行憲法にはそう書かれている。自民党案では削除される。代わりに「自衛軍の保持」と「国民の生命もしくは自由を守るための活動を行うことができる」と書き改められる。つまり、他国と戦争することが出来るようになる。

 ところで、安倍首相の前途には3つの大きな選挙が立ちはだかっている。7月の参院選。2009年9月の自民党総裁選と衆院選だ。これらの大波を乗り越えないと、安倍首相が考える憲法改定は現実のものにならない。今回、野党の反対が激しくなかったのは、その現実味をまだ実感していないからだと思う。しかし、郵政選挙の例がある。日本人は熱狂に弱い民族なのだ。

 初めて日本国憲法を読んだときに、体が震えたのをよく憶えている。そこには高邁な思想が書かれていたからだ。

 高い理想を掲げてその実現に努力するのか、それともごく普通の国・日本にするのか、最初の選択の時は7月にやってくる。
レギュラー出演者
森 啓次郎
森 啓次郎
「Asahiパソコン」「ぱそ」「週刊朝日」編集長を経て、現在、大学講師(メディア論)。