4/13(金)ニュースの視点 No053
「延命中止と殺人罪の間」
終末期医療に関する厚生労働省の指針がまとまった。死を待つしかない末期患者に対して延命を中止すべきなのか、これまで国は基準を示してこなかった。そのため、医療現場では様々な混乱が生じていた。
例えば、1998年に起きた川崎協同病院事件。ぜんそくの重症発作で意識不明に陥った患者から気管チューブを抜き、筋弛緩剤を投与し死亡させたとして、担当医師が殺人罪に問われた。
今年2月末、東京高裁判決が出された。裁判長は、「治療中止について法的規範も医療倫理も確立されていない状況の中で、家族からの要請に決断を迫られた。非難するのは酷な面もある」と述べ、懲役1年6カ月、執行猶予3年の殺人罪としては最も軽い刑を言い渡した。同時に「法律の制定やガイドラインの策定が必要」と指摘した。
また、昨年3月には富山県射水(いみず)市民病院でも事件が明るみに出た。末期がん患者などの人工呼吸器をはずし、過去6年間に7人を死亡させていた。家族の同意はカルテに書かれていたが、患者本人の意思を確認する文書はなかった。担当外科部長の単独判断が問題とされた。
今回の指針は、これらの事件に対応する形で出されたものだ。その基本的な考えは、医師が単独で行うことなくチームで判断するという点だ。そして、できるだけ患者本人の意思、いわゆる「リビング・ウイル」を確認すること。本人の意思が確認できない場合は、家族から患者の意思が推定できるならば、その推定意思を重視すること。もし、それも出来ない場合は、医療チームが家族と話し合いで決めるとしている。
しかし、脳疾患や心臓疾患などで突然倒れたとき、本人の意思確認はもちろん出来ず、家族もかなり動揺している状態にある。「お医者さんにお任せします」と言わざるを得ない家族が多いのも事実だ。医者たちが「一任された」と誤解する余地、いわゆる「あうんの呼吸」が生まれてしまう恐れが依然としてある。
さらに、指針に欠けているものがある。それは、どういう状態を終末期とするのかが書かれていない点だ。今年2月、日本救急医学会は、脳死と診断され他に治療法がなく、数時間から数日間以内に死亡が予想される場合を終末期と具体的に定義した。こちらの方が一歩先んじた形だ。
ところで、救急医療の現場では、死期が迫ったとき人工呼吸器をつけるほか、昇圧剤の投与、心臓マッサージ、人工透析、輸血、栄養補給など様々な延命治療が施される。これらのどれを中止することが許されるのかも明らかにされていない。今回の指針は、単なる手続きを定めたものにすぎないといえる。
いったん装着した人工呼吸器を外しても許されるのか。何をすると殺人罪に問われるのか、現場はその答えを待っている。
終末期医療に関する厚生労働省の指針がまとまった。死を待つしかない末期患者に対して延命を中止すべきなのか、これまで国は基準を示してこなかった。そのため、医療現場では様々な混乱が生じていた。
例えば、1998年に起きた川崎協同病院事件。ぜんそくの重症発作で意識不明に陥った患者から気管チューブを抜き、筋弛緩剤を投与し死亡させたとして、担当医師が殺人罪に問われた。
今年2月末、東京高裁判決が出された。裁判長は、「治療中止について法的規範も医療倫理も確立されていない状況の中で、家族からの要請に決断を迫られた。非難するのは酷な面もある」と述べ、懲役1年6カ月、執行猶予3年の殺人罪としては最も軽い刑を言い渡した。同時に「法律の制定やガイドラインの策定が必要」と指摘した。
また、昨年3月には富山県射水(いみず)市民病院でも事件が明るみに出た。末期がん患者などの人工呼吸器をはずし、過去6年間に7人を死亡させていた。家族の同意はカルテに書かれていたが、患者本人の意思を確認する文書はなかった。担当外科部長の単独判断が問題とされた。
今回の指針は、これらの事件に対応する形で出されたものだ。その基本的な考えは、医師が単独で行うことなくチームで判断するという点だ。そして、できるだけ患者本人の意思、いわゆる「リビング・ウイル」を確認すること。本人の意思が確認できない場合は、家族から患者の意思が推定できるならば、その推定意思を重視すること。もし、それも出来ない場合は、医療チームが家族と話し合いで決めるとしている。
しかし、脳疾患や心臓疾患などで突然倒れたとき、本人の意思確認はもちろん出来ず、家族もかなり動揺している状態にある。「お医者さんにお任せします」と言わざるを得ない家族が多いのも事実だ。医者たちが「一任された」と誤解する余地、いわゆる「あうんの呼吸」が生まれてしまう恐れが依然としてある。
さらに、指針に欠けているものがある。それは、どういう状態を終末期とするのかが書かれていない点だ。今年2月、日本救急医学会は、脳死と診断され他に治療法がなく、数時間から数日間以内に死亡が予想される場合を終末期と具体的に定義した。こちらの方が一歩先んじた形だ。
ところで、救急医療の現場では、死期が迫ったとき人工呼吸器をつけるほか、昇圧剤の投与、心臓マッサージ、人工透析、輸血、栄養補給など様々な延命治療が施される。これらのどれを中止することが許されるのかも明らかにされていない。今回の指針は、単なる手続きを定めたものにすぎないといえる。
いったん装着した人工呼吸器を外しても許されるのか。何をすると殺人罪に問われるのか、現場はその答えを待っている。
