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森啓次郎エッセイ
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3/9(金) ニュースの視点 No048
「五輪招致を承知しますか?」

 都知事選の候補者がそろった。現職の石原慎太郎氏に挑戦するのは、前宮城県知事の浅野史郎氏、建築家の黒川紀章氏、元足立区長の吉田万三(まんぞう)氏の3人だ。3月22日告示、4月8日投票だ。

 争点は4つある。オリンピック、教育行政、新銀行東京、情報公開だ。このうち、新銀行は、460億円の累積赤字を抱える銀行を存続させるか、処理するかの問題だ。情報公開は、するかしないかの決断の問題になる。ここでは、オリンピックと教育行政の2つを取り上げてみたいと思う。

 まずは2016年のオリンピック招致問題。石原氏によれば、「10年後の東京」計画の総仕上げとして考えられたものだ。2012年に築地市場を豊洲に移転させる。跡地にオリンピックのメディアセンターを造る。築地と豊洲の間にある晴海にメーンスタジアムを、豊洲の隣の有明に選手村を建設する。要するに、懸案だった臨海副都心を一挙に開発してしまおうという計画だ。それも国の予算でやってしまおうという狙いだ。しかし、うまくいかなかった場合を想定して、都は独自財源として2009年までに4000億円を積み立てるとしている。いずれにせよ、国と都の財政から巨額な税金が使われることは間違いない。

 ところで、2016年には首都高中央環状線と圏央道が完成する予定だ。これに外環道を合わせると、都心の交通渋滞は解消できるとしている。

 オリンピックに関しては、黒川氏は「中止」、吉田氏は「計画の白紙化」、浅野氏は「最優先にするのは疑問」という言い方で「再検討」を主張している。わかりやすい政策だけに最大の争点になると思う。

 オリンピック招致の隠れた狙いの一つは国家意識の高揚にある。「君が代・日の丸」を学校に義務づけようとしている石原氏の教育行政と共通する考え方だ。安倍首相の「美しい国」に連動する思想ともいえる。

 浅野氏は「強制を違憲とした地裁判決を受け入れ、子ども中心の卒業式をするべき」としている。吉田氏も「学校に対して強制や干渉を改めるべき」と訴えている。

 ところで、私はオリンピック招致が「第2の都市博」にならないか心配している。勝算は本当にあるのだろうか。2008年の北京、2012年のロンドンの後に、もう一度アジアに持ってこられるのか疑問だからだ。アメリカのシカゴやロサンゼルス、南米のリオデジャネイロやブエノスアイレスなど強力なライバルがいる。可能性はかなり低いといえる。

 来年のIOC理事会で5都市に絞られ、2009年10月2日の総会で最終決定が行われる。その時点で、建設計画はすでにスタートしているはずだ。もし、候補地から外れた場合、どう責任を取るつもりなのだろうか。
レギュラー出演者
森 啓次郎
森 啓次郎
「Asahiパソコン」「ぱそ」「週刊朝日」編集長を経て、現在、大学講師(メディア論)。