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放送内容
森啓次郎エッセイ
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2/16(金) ニュースの視点 No045
「ごね得か平和への一歩か、6カ国協議」

 6カ国協議が閉幕した。合意文書には北朝鮮の非核化とエネルギー支援が盛り込まれている。

 2段階に分かれている。初期段階では、北朝鮮が寧辺(ニョンビョン)にある核施設を60日以内に停止・封印すれば、その見返りに日本を除く4カ国から重油5万トン相当のエネルギー支援を受け取れる。同時に、北朝鮮は国際原子力機関(IAEA)の査察を受け入れる。米朝は2国間協議を開き、テロ支援国家指定の解除や貿易制限を撤廃するために敵国通商法を終了させる作業を開始しなければならない。具体的進行は、米朝、日朝を含めて5つの作業部会で話し合われることになっている。

 第2段階では、北朝鮮はすべての核計画を申告し、すべての核施設の無能力化に進む過程で、重油95万トン相当のエネルギーを受け取るとしている。合計で重油100万トンは北朝鮮の1年分の輸入量に匹敵する。金額にして360億円分という巨額支援だ。

 しかし、合意文書にはいくつかの問題点がある。一つは、すでに6,7個保有しているとされる核爆弾について何も触れられていない点だ。つまり、金正日(キム・ジョンイル)政権は、核保有を認められたまま存続することになる。結局、アメリカは核の完全廃棄をあきらめ、テロリストに核を渡さないという拡散防止に力点を移したように見える。

 また、寧辺の核施設だけを封印しても、どれだけ効果が上がるのかも不透明だ。北朝鮮はアメリカからの攻撃に備えて、核施設を分散化したといわれているからだ。第2段階で、すべての核施設を漏れなく申告するかどうかも疑問だ。「無能力化」とは具体的にどういう状態を指すのかも不明確だ。時間稼ぎをして、さらなる支援を要求してくる可能性もある。

 ところで、合意の背景には米朝双方の事情があった。昨年の中間選挙で民主党に議会の多数を奪われ、イラク戦争の泥沼化で窮地に立つブッシュ政権。起死回生の一打を打つ必要があった。一方の金正日(キム・ジョンイル)政権も、金融、経済制裁で追い詰められ軍の不満が蓄積していた。

 ブッシュ政権は2002年の一般教書演説で、イラク、イラン、北朝鮮をテロ支援国家として「悪の枢軸」と呼んだ。イラクに戦争を仕掛けたものの、身動きが取れないままのアメリカ。それを見透かす北朝鮮。両国の駆け引きをじっと見つめるイラン。

 結局、ブッシュ政権のこの5年間は自らが「悪の枢軸」と名指した国々に振り回され続けてきた5年間だったのではないだろうか。

 今回の合意が「北朝鮮のごね得」で終わるのか、「平和への一歩」となるのか。その判断には、もう少し時間が必要だ。
レギュラー出演者
森 啓次郎
森 啓次郎
「Asahiパソコン」「ぱそ」「週刊朝日」編集長を経て、現在、大学講師(メディア論)。