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放送内容
森啓次郎エッセイ
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1/19(金)ニュースの視点No041
「不二家の甘い予測」

店頭から不二家製品が消えている。問題となった洋菓子ばかりか、全商品に及んでいる。

事の発端は内部告発だった。「11月7日消費期限の牛乳を11月8日に使用した」というものだ。不二家は、この事実を昨年11月中に把握。内部委員会で調査し、対策会議を開いていた。しかし、外部に公表せず2か月間隠蔽していた。

マスコミが押しかけた1月11日の会見。経営幹部は「原料の仕込みを担当していたベテランパート社員の甘さがあった」と釈明。責任を1従業員に押しつけた。

しかしその後、同様の不正が18件判明。組織ぐるみで行われていたこともわかった。とくに問題なのは、今年1月5日に期限切れ生クリームを使って「ショートケーキ」が製造されていたことだ。昨年11月以降、全工場で管理体制の徹底が図られていたにもかかわらず、何の役にも立たなかったことが証明されてしまったからだ。

経営者は、この期に及んでも甘い予測を立てている。一つは、辞任表明したものの、社長が先頭に立って「安全のための対策委員会」の設置を打ち出した点だ。不正に気がつかなかった経営者に不正防止の対策が取れるはずがない。

もう一つは、20日間をメドに工場を再開したいとしている点だ。一度植え付けられた不信感が短期間で払拭できると考えていること自体、消費者に目が向いていない証拠だ。

消費期限切れの原料でどんな商品が作られたのか、全容が明らかにされていない。食品衛生法の60倍もの細菌が検出されながら、なぜ出荷を止められなかったのかの説明もない。埼玉、札幌以外の工場で同様なことが起きていないのかの調査もすんでいない。

このままでは雪印乳業の二の舞を演じる。雪印は、6000人いた社員が1500人に減り、総合食品メーカーからチーズ、バター、マーガリンだけを作る会社に転落した。

ところで、背景にはお菓子業界の不況がある。少子化や健康志向による需要の減少、中国などの台頭による原材料の高騰がある。2000年当時、3.3兆円を誇っていた業界は2000億円近く市場規模を縮小した。不二家はここ数年、赤字体質に陥っていた。生産性を上げるために消費期限を1日でも延ばそうとしたのはそのためだ。「捨てたら怒られる」という現場の声が、社外秘と書かれた内部調査レポートに見られる。

危機管理能力に欠ける同族経営。牛肉偽装を起こした日本ハム、一酸化炭素中毒死を起こしたパロマ工業も創業者一族の企業だった。

不二家の社名は、創業者・藤井林右衛門(りんえもん)の名前にちなんでつけられたが、「2つとして、同じものはない商品を作る」という強い意思が込められている。皮肉にも、「2つとして、あってはならないもの」を作ってしまったといえる。
レギュラー出演者
森 啓次郎
森 啓次郎
「Asahiパソコン」「ぱそ」「週刊朝日」編集長を経て、現在、大学講師(メディア論)。