朝日グループのニュースチャンネル
文字サイズ 大 標準
朝日ニュースターとは視聴方法よくある質問サイトマップHOME
週間番組表月間番組表番組一覧プレゼントご意見・ご感想メールマガジン
視点
放送内容
森啓次郎エッセイ
放送内容
1/12(金) ニュースの視点 No040
「食料争奪戦が始まった」

食料の争奪戦が始まっている。漁獲制限が厳しくなったマグロだけではない。サバ、スケトウダラ、サーモン。とくにサーモンは、BSEの影響もあって欧米で人気が高まり、価格が5年前の2.5倍に跳ね上がっている。

肉をめぐっても激しくなっている。とくに、家畜の飼料となるトウモロコシや大豆の奪い合いが起きている。13億人を抱える中国の国民が肉を食べ始めたからだ。穀物輸出国だった中国は2004年に輸入国に変わった。2004年の大豆輸入量は2580万トン。日本の6倍近い数字だ。

砂糖の価格も急騰している。「バイオエタノール燃料」として、サトウキビやトウモロコシが使用され始めたからだ。食品業界の合併・買収騒ぎ、いわゆるM&Aの背景には、少子化による需要の減少に加えて、原材料価格の高騰も一因となっている。

こうした中、日本の食糧自給率が極めて低いことが気になる。日本人が1日1人あたり摂っているカロリーの40%しか自給できていないのが現状だ。つまり、今突然、輸入がストップすると、7800万人の人が飢えに苦しむ計算になる。

とくに、穀物自給率はわずか28%。この穀物には家畜飼料用のトウモロコシも含まれている。世界の主要30カ国中28位の寂しさだ。主食用に限れば60%と上がるが、それでも5200万人が主食を食べられない計算だ。

自給率問題では「天ぷらそば」がよく例に挙げられる。そばの自給率は約20%。8割は中国やカナダからの輸入に頼っている。衣に使われている小麦粉の自給率は約14%。エビの自給率はわずか5%。天ぷらを揚げるのに使う油やつゆに使う醤油の原料の大豆も5%の低さだ。

ところで、地球温暖化によって世界各地で異常気象が起きている。今、オーストラリアでは大干ばつによって小麦の収穫量は6割減になる見通しだという。家畜に対しても大きな影響が出ている。食料の奪い合いが現実のものとなる可能性は高まりつつある。

イザと言う時のために、輸出国との間で食の安全保障条約、いわゆる食料安保を結んでおこうという動きがある。優先的に回してもらう契約だ。しかし、本当の危機が訪れたときには役に立たないことは自明だ。国際的批判にもさらされる。

結局、日本人が生き抜くためには食料自給率を上げる必要がある。せめて、他の主要国並みに7割以上を目指すべきだ。とくにタンパク源である大豆の自給率を大幅に引き上げなければならない。また、コンビニやファーストフード店で捨てられている賞味期限切れの食料を、飼料などに回す必要がある。さらに、日本人自ら自給率に合わせて食生活を変化させる必要もある。

そして何より、食料問題を商社に任せるのではなく、国の政策として打ち出していくべきだと思う。
レギュラー出演者
森 啓次郎
森 啓次郎
「Asahiパソコン」「ぱそ」「週刊朝日」編集長を経て、現在、大学講師(メディア論)。