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森啓次郎エッセイ
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11/3(金・祝) ニュースの視点 No031
「目の上のたんこぶ、教育基本法第10条」


 教育基本法が改定されようとしている。いじめと未履修騒ぎの裏で、今国会中の成立が図られようとしている。

 教育基本法はわずか11条から出来ている。戦後間もない1947年、国家によって「個人」が犠牲になった軍国主義教育の反省から生まれた。

 「われらは、さきに、日本国憲法を確定し、民主的で文化的な国家を建設して、世界の平和と人類の福祉に貢献しようとする決意を示した。この理想の実現は、根本において教育の力にまつべきものである」――前文にはこう書かれている。

 憲法の掲げる理想を実現するために教育はなされる。教育基本法は憲法に準じるという意味から「準憲法」とも呼ばれている。

 ところで、与党の改定案では新たに加わった部分や削られ書き直された部分が多数ある。

 そのうちの一つが「愛国心」だ。第2条の「教育の目標」には、「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する」と書かれている。当然のことながら「日の丸・君が代」がイメージされている。

 第9条の「教員」の項目も新たに加わった。「教員は、絶えず研究と修養に励み、その職責の遂行に努めなければならない」――これが「教員免許の更新」を指していることは、安倍首相のこれまでの演説・答弁からも明らかだ。教員は「国民全体の奉仕者」から、国・行政に対して責任を負う形に替えられている。

 そして、一番重要なのが現行法10条の書き換えだ。「教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきもの」という部分が、「教育は、不当な支配に服することなく、この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきものであり」となっている。

 一見同じように聞こえる。しかし、現行法が「国は、国民に対して不当な支配をしてはいけない、つまり、教育の主体は国民である」と規定しているのに対して、与党案は「教育の主体は法律、つまり教育行政」にあると巧みなすり替えが行われている。

 9月21日、東京地裁は「入学式や卒業式での日の丸・君が代の強制は違法」とした判断を下したが、その根拠になったのがこの10条だった。判決では「教育基本法10条が禁じた『教育への不当支配』にあたる」としている。

 10条は文部科学省にとって「目の上のたんこぶ」だった。全国一斉学力テストなど、何かを強制しようとするときにいつも前に立ちはだかってきた。

 与党案が可決されると、間違いなく教育現場は変質する。愛国心を育てるために、学校内には日の丸・君が代があふれ出す。反対する先生はダメ教師の烙印を押され、免許の更新も認められなくなる。また、新たに作られた法律に異を唱えることは一切許されなくなる――そんなギスギスした光景が見えてくる。
レギュラー出演者
森 啓次郎
森 啓次郎
「Asahiパソコン」「ぱそ」「週刊朝日」編集長を経て、現在、大学講師(メディア論)。