10/27(金) ニュースの視点 No030
「三つ揃いスーツ汚職」
佐藤栄佐久・前福島県知事が逮捕された。容疑は収賄。わいろを受け取った疑いだ。
手口は巧妙だった。贈収賄事件では、工事を「受注」する企業が、「発注」する権限を持つ人にお金を渡すのが一般的だ。しかし、今回のケースでは第3者が介在している。贈賄側は、大型ダム工事を受注した準大手ゼネコン「前田建設」の、その下請けに入る「水谷建設」。収賄側は、前知事の弟、佐藤祐二被告だ。
土地売買を装っている。99年11月、実弟が社長を務めていたスーツ会社の駐車場跡地を、約3億5000万円で水谷建設が購入する。この時、舞台裏では200億円を超すダム工事を落札する工作が密かに進められていた。東北全域の土木建築工事の仕切り役だった鹿島建設と、前田建設、水谷建設の関係者、それに知事の息のかかった県・土木部長が仙台市内で会合を持っていた。
前田建設が正式に落札したのは2000年8月、その翌年には弟の会社に4億円の融資が行われている。成功報酬の「半金前払い」といえる。そして2002年8月28日、本社工場跡地を8億7000万円で同じ水谷建設が購入する。代金が支払われたその日、融資の返済が行われている。もらった金の一部がそのまま返却に回された形だ。わいろ性を認識していたのか、佐藤知事はこの3カ月前にスーツ会社の取締役を辞任している。同様の手口を使ってさらに1億円が追加される。
結局、総額13億2000万円が水谷建設から知事の実弟に渡ったことになる。検察は、うち時効にかからない9億7000万円分の土地取引そのものがわいろだったとみている。
時効との闘いでもあった。談合、贈賄の時効は3年、ダム工事に関してはすでに時効が成立していた。しかし、収賄側の時効は5年、この2年の差が関係者の証言を得るのに役立ち、逮捕につながったと思われる。
きっかけは、2004年8月に県が発注した下水道工事をめぐる談合事件。この時、逮捕されたのが知事の参議院議員時代からの支援者で、地元設備会社社長の辻政雄被告。弟と一緒に業者の仕切り役を務めていた。
今回の汚職構造は「三つ揃いスーツ方式」と呼べる。佐藤知事が見た目のいい上着、裏に隠れたチョッキが実弟、下半身を覆うズボンが辻被告だ。弟は検察に対する防弾チョッキでもあった。このスーツをゼネコン側は競って買い求め身につけていた。
佐藤知事は東京電力のプルサーマル計画に異を唱えるなど、「物言う知事」として知られていた。しかし、まさに異を唱えた2日後に水谷建設から1億円が実弟に渡されている。「権力は腐敗する」のではなく、「最初から腐敗していた」のではないだろうか。
時効がなければ、疑惑はまだまだたくさん存在していたはずだ。
佐藤栄佐久・前福島県知事が逮捕された。容疑は収賄。わいろを受け取った疑いだ。
手口は巧妙だった。贈収賄事件では、工事を「受注」する企業が、「発注」する権限を持つ人にお金を渡すのが一般的だ。しかし、今回のケースでは第3者が介在している。贈賄側は、大型ダム工事を受注した準大手ゼネコン「前田建設」の、その下請けに入る「水谷建設」。収賄側は、前知事の弟、佐藤祐二被告だ。
土地売買を装っている。99年11月、実弟が社長を務めていたスーツ会社の駐車場跡地を、約3億5000万円で水谷建設が購入する。この時、舞台裏では200億円を超すダム工事を落札する工作が密かに進められていた。東北全域の土木建築工事の仕切り役だった鹿島建設と、前田建設、水谷建設の関係者、それに知事の息のかかった県・土木部長が仙台市内で会合を持っていた。
前田建設が正式に落札したのは2000年8月、その翌年には弟の会社に4億円の融資が行われている。成功報酬の「半金前払い」といえる。そして2002年8月28日、本社工場跡地を8億7000万円で同じ水谷建設が購入する。代金が支払われたその日、融資の返済が行われている。もらった金の一部がそのまま返却に回された形だ。わいろ性を認識していたのか、佐藤知事はこの3カ月前にスーツ会社の取締役を辞任している。同様の手口を使ってさらに1億円が追加される。
結局、総額13億2000万円が水谷建設から知事の実弟に渡ったことになる。検察は、うち時効にかからない9億7000万円分の土地取引そのものがわいろだったとみている。
時効との闘いでもあった。談合、贈賄の時効は3年、ダム工事に関してはすでに時効が成立していた。しかし、収賄側の時効は5年、この2年の差が関係者の証言を得るのに役立ち、逮捕につながったと思われる。
きっかけは、2004年8月に県が発注した下水道工事をめぐる談合事件。この時、逮捕されたのが知事の参議院議員時代からの支援者で、地元設備会社社長の辻政雄被告。弟と一緒に業者の仕切り役を務めていた。
今回の汚職構造は「三つ揃いスーツ方式」と呼べる。佐藤知事が見た目のいい上着、裏に隠れたチョッキが実弟、下半身を覆うズボンが辻被告だ。弟は検察に対する防弾チョッキでもあった。このスーツをゼネコン側は競って買い求め身につけていた。
佐藤知事は東京電力のプルサーマル計画に異を唱えるなど、「物言う知事」として知られていた。しかし、まさに異を唱えた2日後に水谷建設から1億円が実弟に渡されている。「権力は腐敗する」のではなく、「最初から腐敗していた」のではないだろうか。
時効がなければ、疑惑はまだまだたくさん存在していたはずだ。
