10/20(金)ニュースの視点 No029
「法的成熟目指せ、代理出産」
娘の子どもを親が産んだ。がんによって子宮を摘出した娘に代わって、実の母が代理出産を行った。娘の卵子とその夫の精子を体外受精させ、母親の子宮に移植した。娘は30代、母親は50代の後半だった。
今回、事実を公表した「諏訪マタニティークリニック」の根津八紘(やひろ)院長は、これまでに母親、姉妹などによる代理出産を5例手がけたことも明らかにした。公表した理由として「代理出産で生まれた、タレントの向井亜紀さん夫妻の双子に対して、実子として認めるべきとした高裁決定を不服として品川区が最高裁に抗告したことに憤りを覚えた」としている。
その向井亜紀さんの場合、アメリカ人女性に夫妻の体外受精卵を移植して代理出産してもらっている。こうした海外での事例はすでに数百件に上るといわれている。
背景には、日本では認められていない現実がある。厚生労働省の生殖補助医療部会は、2003年、「女性を生殖の手段として扱い、第3者に出産による危険を負わせることや家族関係を複雑にする恐れがある」などから、罰則付きで禁止すべきとした報告書をまとめた。日本産婦人科学会も同様の指針を出している。
昨年11月、最高裁は代理出産を頼んだ女性が自治体に出生届を拒否されたとして訴えていた裁判で、「母と認められない」との判断を示した。
カリフォルニア州でアメリカ人女性から卵子の提供を受け、夫の精子と体外受精させ、別の女性に代理出産してもらったケースだった。
日本の法律では「腹を痛めた人」、言い換えると「生殖能力がある人」にしか法的には母親の資格を認めていない。もちろん、生まれた子どもたちは養子縁組で、実際には戸籍上の親子関係になっている。
ところで、代理出産では双子や三つ子が生まれやすい傾向がある。妊娠の確立を上げるために5個前後の受精卵を子宮内に入れるからだ。未熟児になる可能性も高くなる。人口保育器の使用料がかさんで、1億円近く請求された人が支払いを拒否したり、障害児が生まれたために子どもを引き取らなかったりしたケースもある。代理母と依頼者との間で感情的トラブルも発生している。
日本では10組に1組の夫婦に子どもが生まれていない。それが生物学的自然といえる。しかし、その自然を生殖技術の進歩が作り替えようとしている。ドイツ、フランスでは禁止、スペイン、オランダでは認められている。アメリカは州によって対応が違う。日本ではまだ法律ができていない。
代理出産問題は単に「子どもが欲しい」といった感情論や、「少子化問題」といった的外れな議論の中で解決すべきではないと思っている。やや大げさに言えば人類にとって子孫を残す意味とは何か、という観点から法的成熟を目指すべきだと思う。
娘の子どもを親が産んだ。がんによって子宮を摘出した娘に代わって、実の母が代理出産を行った。娘の卵子とその夫の精子を体外受精させ、母親の子宮に移植した。娘は30代、母親は50代の後半だった。
今回、事実を公表した「諏訪マタニティークリニック」の根津八紘(やひろ)院長は、これまでに母親、姉妹などによる代理出産を5例手がけたことも明らかにした。公表した理由として「代理出産で生まれた、タレントの向井亜紀さん夫妻の双子に対して、実子として認めるべきとした高裁決定を不服として品川区が最高裁に抗告したことに憤りを覚えた」としている。
その向井亜紀さんの場合、アメリカ人女性に夫妻の体外受精卵を移植して代理出産してもらっている。こうした海外での事例はすでに数百件に上るといわれている。
背景には、日本では認められていない現実がある。厚生労働省の生殖補助医療部会は、2003年、「女性を生殖の手段として扱い、第3者に出産による危険を負わせることや家族関係を複雑にする恐れがある」などから、罰則付きで禁止すべきとした報告書をまとめた。日本産婦人科学会も同様の指針を出している。
昨年11月、最高裁は代理出産を頼んだ女性が自治体に出生届を拒否されたとして訴えていた裁判で、「母と認められない」との判断を示した。
カリフォルニア州でアメリカ人女性から卵子の提供を受け、夫の精子と体外受精させ、別の女性に代理出産してもらったケースだった。
日本の法律では「腹を痛めた人」、言い換えると「生殖能力がある人」にしか法的には母親の資格を認めていない。もちろん、生まれた子どもたちは養子縁組で、実際には戸籍上の親子関係になっている。
ところで、代理出産では双子や三つ子が生まれやすい傾向がある。妊娠の確立を上げるために5個前後の受精卵を子宮内に入れるからだ。未熟児になる可能性も高くなる。人口保育器の使用料がかさんで、1億円近く請求された人が支払いを拒否したり、障害児が生まれたために子どもを引き取らなかったりしたケースもある。代理母と依頼者との間で感情的トラブルも発生している。
日本では10組に1組の夫婦に子どもが生まれていない。それが生物学的自然といえる。しかし、その自然を生殖技術の進歩が作り替えようとしている。ドイツ、フランスでは禁止、スペイン、オランダでは認められている。アメリカは州によって対応が違う。日本ではまだ法律ができていない。
代理出産問題は単に「子どもが欲しい」といった感情論や、「少子化問題」といった的外れな議論の中で解決すべきではないと思っている。やや大げさに言えば人類にとって子孫を残す意味とは何か、という観点から法的成熟を目指すべきだと思う。
