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森啓次郎エッセイ
森啓次郎エッセイ
7/11(金)
フタし、鍵かけ、封印した「洞爺湖サミット」

 サミットには失望した。何も決められない福田政権の資質がそのまま会議に出てきた。

 まずは地球温暖化対策。新聞には温室効果ガスの「50年半減 世界目標へ」と威勢のいい文字が踊ったが、結局、なんら有効な目標を打ち出せなかったために国連に下駄を預けた格好だ。「国連の場」に移すならば、G8の存在価値を自ら放棄したことに変わりない。先進国が率先して何かを決め、世界をリードしていこうというのが、サミットの役割だとしたら、何も出来ることはないと宣言したことになる。

 背景には、ブッシュ政権の及び腰がある。ブッシュ大統領はよく「中国、インドが参加しなければ意味がない」と演説する。裏には「中国、インドは絶対に削減目標に反対する」という読みが見え見えだ。ブッシュ大統領は産業界からの要請を受けて、削減目標を定めることに極めて消極的だ。かといって、「削減反対」とは言えないから、「中国、インド」のせいにして、自身の政権が終わるまで問題の先送りを図っている。

 3Fも同様だ。石油(Fuel)、食料(Food)の高騰には何も手を打てなかった。新聞には「食料高騰 増援を要請」とアフリカ諸国からの声を紹介していたが、結局、「援助」という形でしかこの問題に対処出来なかった。「援助」とは「施し」である。一時的な解決策でしかない。本来は、高騰そのものをストップさせる方策が採られなくてはならない。石油、食料といった「生活必需品」に、投機マネー(Finance)の流入を防ぐ規制が話し合われるべきだった。そうすれば、アフリカだけでなく、世界の多く人々に利益をもたらしたはずだ。アフリカを救うことは、世界を救うことにつながらなくては意味がない。

 先進国の首脳たちに、本気で原油価格の高騰を止めようとする意欲が、全く感じられなかった。投機マネーの裏側に各国の莫大なお金が流入している現実を見せつけられた思いだ。原油価格はサミットを見てさらに上がった。市場は、G8のやる気の無さに敏感に反応した。

 食料高騰の要因の一つになっている「バイオ燃料」についても口をつぐんだ。トウモロコシから「バイオ燃料」を作るのに熱を上げているブッシュ大統領に遠慮した形だ。議長国がアメリカの同盟国・日本だったことが影響している。議長国の顔をつぶさないためにヨーロッパ各国が発言を控えた。

 結局、各国首脳の顔見世興行でサミットは終わった。駅のゴミ箱にフタをし、ロッカーに鍵をかけ、自販機を封印し、庶民に散々迷惑をかけて、莫大な税金が露と消えた。

 温室効果ガスの削減にフタをし、石油・食料高騰問題に鍵をかけ、投機マネー問題を封印した。そして、わずかな希望が露と消えた。

 こんなサミットなら止めた方がいい。むしろ期待を振りまかない「単なる飲み会」にしたほうがいい。年に1回の「首脳たちの飲み会」。

 フレデリック・フォーサイスの最新作「アフガンの男」では、サミットがクイーン・メアリー2世号の船上で行われる場面が出てくる。ニューヨークからイギリス南部の港町サウザンプトンまでの大西洋を横断する5日間の船旅。煩わしいデモ隊に悩まされることなく、両側をミサイル巡洋艦に挟まれ、空には早期警戒管制機とレーダーミサイルを備えた攻撃機に護衛されている。極めて安全なはずの航海だった。

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全世界を舞台に話は展開する。
レギュラー出演者
森 啓次郎
森 啓次郎
「Asahiパソコン」「ぱそ」「週刊朝日」編集長を経て、現在、大学講師(メディア論)。