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森啓次郎エッセイ
森啓次郎エッセイ
7/4(金)
「うなぎロンダリング」

 これは、「マネーロンダリング」ならぬ「うなぎロンダリング」だ。偽国産ウナギを、架空の会社、実在の食品商社など何社かを通すことで、いつの間にか純国産ウナギに化けさせる手口である。

 疑惑の中心にいるのは、ウナギ輸入販売会社の「魚秀」だが、売りさばいた「神港魚類」、その親会社のマルハニチロホールディングス、手数料を取って名前を貸した東京の食品商社2社、中国産の箱から国産の箱に詰め替えた高松市の水産会社、高知の水産加工会社などにも責任がある。

 とくに「神港魚類」の担当者は、ウナギの専門家で「中国産」であることを初めから見抜いていた。「被害者」ではなく「共犯者」である。名前を貸すだけで数千万円を受け取った商社も、「やばい」もののロンダリングに使われていることを自覚していたはずだ。箱をすり替えた高松市の水産会社の元専務も明確な「共犯者」である。「中国産ウナギ」の危険性は、遅くても2003年には指摘されていたから、長期間にわたって、組織的に、かつ幅広く行われてきた可能性が高い。時間をかけ、より巧妙な仕組みが作られてきた。

 回収された「ウナギの蒲焼き」からは、合成抗菌剤の「マラカイトグリーン」が検出された。つまり、単に「毒入り餃子」問題で「中国産ウナギ」が売れなくなったから偽装問題を引き起こしたわけではなく、極端に言えば、廃棄しなくてはならなくなった「毒入りウナギ」を偽装して売り払ったことになる。罪は一層重い。

 背景には、国産と外国産との間の曖昧な線引きがある。稚魚を日本で育て、その後、外国で大きくしてもらって輸入する「里帰りウナギ」。1日でも長く日本で育てると「国産ウナギ」になる食品表示法の摩訶不思議さ。

 同じことは牛肉産地偽装問題でも指摘した。外国産の牛を日本に輸入し3か月以上育てると「国産」になる手品。北海道で365日育てたのち、例えば神戸で366日育てると「神戸牛」になる不思議さ。では、黒毛和牛をオーストラリアで育てて輸入したら「オージービーフ」か「和牛」か。

 2等級の枝肉を「飛騨牛」に偽装した食肉卸小売業の「丸明」。豚肉を牛肉に偽装した「ミートホープ」社の1件は、やはり氷山の一角だった。「肉のロンダリング」である。2人の社長の態様があまりに似ているのを見ると、業界全体に偽装体質が蔓延しているのではないかと疑いたくなる。そして偽装は、食肉業界から魚類の輸入業界に移った。

 ところで、エビ養殖で巨額の資金をだまし取った「ワールドオーシャンファーム」は、さしずめ「偽ビジネス」=「ビジネスロンダリング」だ。3万5000人から約850億円を集めた。偽のエビ養殖事業を立ち上げ、それを本物らしく見せるために数々の舞台装置を用意した。ロンダリング装置として、フィリピンに実際の養殖池まで造っていた。わずか65ヘクタールを「東京ドーム450個分」(約2150ヘクタール)と宣伝していた。信用させるために現地豪華視察旅行まで行っていた。

 日本人は「洗濯」(ロンダリング)に弱いらしい。外見上、きれいに仕上がっていればすぐ信用してしまう。逆に汚れには敏感だ。大聖堂への落書き。罪は問われるべきだが、周りには、名前だけ書いて特定できない人物がたくさんいる。それらが、何の罪にも問われないのは、やはり不公平ではないかと、つい思ってしまう。

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国産と書いてあったが・・・・。

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落書きがされたフィレンツェの「サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂」。
現場となった茶色い塔の上には、たくさんの観光客が登っていた。
レギュラー出演者
森 啓次郎
森 啓次郎
「Asahiパソコン」「ぱそ」「週刊朝日」編集長を経て、現在、大学講師(メディア論)。