6/20(金)
「派遣」と「搾取」と「大量殺人」
「搾取」という名の妖怪が日本社会を歩き回っている。カール・マルクスが『資本論』の中で唱えた言葉が、21世紀になって再びよみがえってきた。秋葉原無差別殺傷事件の一つの引き金になった派遣社員制度である。
派遣とはピンハネ(搾取)である。人を会社に紹介するだけで、お金が入ってくる。本来ならば、紹介する最初の時だけ「紹介料」を取るべきなのに、その後もずっと取り続ける。その理由は、会社側が派遣社員と直接、面と向かって交渉しなくてもいいように、お金も話も派遣会社を通して交わされるからだ。しかも、一カ所に3年以上いられると、直接雇用の義務が生じるので、人のやりくりまでも派遣会社に丸投げしてしまう会社も少なくない。
ところで、「搾取される労働者」というイメージは、日本が高度成長を遂げ、賃金もそれなりに上がったところで「死語」になった。給料がすべて銀行振込になったことが象徴的だった。「現金」が会社と労働者の間にやりとりされなくなって生々しさが薄められた。
ベルリンの壁が崩壊し、社会主義国家が次々消えていってマルクスは遠い存在になったはずだった。
ところが今、派遣会社の存在が、非常にわかりやすい形で「搾取(ピンハネ)される労働者」を浮かび上がらせてきた。しかし、「搾取しているのは、本当はいったい誰なのか」が、派遣社員自身にも分かりにくくなっている。加藤智大(ともひろ)容疑者の攻撃対象が、派遣会社でなく、派遣先の会社でもなかったのは、そのことを象徴している。結局は、今の社会であり、自分よりいい暮らしをしている「誰でもよかった」となってしまった。
派遣制度を生み出したのは、資本家である。景気が低迷し、それでも利益を出さなくてはならなくなった時、人件費を抑えようと政府を動かし、派遣法を制定させた。政治家は「規制緩和」「構造改革」という美名を掲げてこれに応えた。
派遣社員の存在によって社内に二重構造が生まれた。「下の者」を作ることで、正社員は、正社員であるだけで何か「エリート意識」をくすぐられる。同時に、会社に対して不満が言いにくくなった。「いつでも取って代わられる恐怖」がつきまとうからだ。会社の構成員がどんどん派遣社員で埋められていけば、当然のことながら「労働組合」の力が弱くなる。
総務省の発表では、派遣社員など非正規雇用者の割合が3割を超えた。3人に1人は「ワーキングプア」である。容易に想像できるが、このままの状態が続けば、消費が大幅に下がる。住宅、衣服、車、結婚関連・・・ありとあらゆる消費が落ちていく。少子化対策が笑っちゃう。子ども一人当たりの援助を増やしても、その前提の「家庭」すら作れないのだから。
国内では物が売れなくなっている。石油と食料価格の高騰が拍車をかけている。悲鳴を上げているのは、トラック業界、漁業関係者だけではない。世界ではスト、暴動が頻発し始めている。
あの時、暫定税率を撤廃して2兆6000億円の減税をしていれば、こうした事態を少しは先送りすることが出来た。
安全神話の崩壊、高齢者いじめ、生活必需品の高騰、官僚組織のみみっちい腐敗、消費税増税の動き――庶民の心の底には、不満が澱のように溜まっている。次の総選挙では、与党が惨敗することだけは間違いない。
「搾取」という名の妖怪が日本社会を歩き回っている。カール・マルクスが『資本論』の中で唱えた言葉が、21世紀になって再びよみがえってきた。秋葉原無差別殺傷事件の一つの引き金になった派遣社員制度である。
派遣とはピンハネ(搾取)である。人を会社に紹介するだけで、お金が入ってくる。本来ならば、紹介する最初の時だけ「紹介料」を取るべきなのに、その後もずっと取り続ける。その理由は、会社側が派遣社員と直接、面と向かって交渉しなくてもいいように、お金も話も派遣会社を通して交わされるからだ。しかも、一カ所に3年以上いられると、直接雇用の義務が生じるので、人のやりくりまでも派遣会社に丸投げしてしまう会社も少なくない。
ところで、「搾取される労働者」というイメージは、日本が高度成長を遂げ、賃金もそれなりに上がったところで「死語」になった。給料がすべて銀行振込になったことが象徴的だった。「現金」が会社と労働者の間にやりとりされなくなって生々しさが薄められた。
ベルリンの壁が崩壊し、社会主義国家が次々消えていってマルクスは遠い存在になったはずだった。
ところが今、派遣会社の存在が、非常にわかりやすい形で「搾取(ピンハネ)される労働者」を浮かび上がらせてきた。しかし、「搾取しているのは、本当はいったい誰なのか」が、派遣社員自身にも分かりにくくなっている。加藤智大(ともひろ)容疑者の攻撃対象が、派遣会社でなく、派遣先の会社でもなかったのは、そのことを象徴している。結局は、今の社会であり、自分よりいい暮らしをしている「誰でもよかった」となってしまった。
派遣制度を生み出したのは、資本家である。景気が低迷し、それでも利益を出さなくてはならなくなった時、人件費を抑えようと政府を動かし、派遣法を制定させた。政治家は「規制緩和」「構造改革」という美名を掲げてこれに応えた。
派遣社員の存在によって社内に二重構造が生まれた。「下の者」を作ることで、正社員は、正社員であるだけで何か「エリート意識」をくすぐられる。同時に、会社に対して不満が言いにくくなった。「いつでも取って代わられる恐怖」がつきまとうからだ。会社の構成員がどんどん派遣社員で埋められていけば、当然のことながら「労働組合」の力が弱くなる。
総務省の発表では、派遣社員など非正規雇用者の割合が3割を超えた。3人に1人は「ワーキングプア」である。容易に想像できるが、このままの状態が続けば、消費が大幅に下がる。住宅、衣服、車、結婚関連・・・ありとあらゆる消費が落ちていく。少子化対策が笑っちゃう。子ども一人当たりの援助を増やしても、その前提の「家庭」すら作れないのだから。
国内では物が売れなくなっている。石油と食料価格の高騰が拍車をかけている。悲鳴を上げているのは、トラック業界、漁業関係者だけではない。世界ではスト、暴動が頻発し始めている。
あの時、暫定税率を撤廃して2兆6000億円の減税をしていれば、こうした事態を少しは先送りすることが出来た。
安全神話の崩壊、高齢者いじめ、生活必需品の高騰、官僚組織のみみっちい腐敗、消費税増税の動き――庶民の心の底には、不満が澱のように溜まっている。次の総選挙では、与党が惨敗することだけは間違いない。
