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森啓次郎エッセイ
森啓次郎エッセイ
5/2(金)
「穴熊」のしっぺ返し

 将棋でいう「穴熊」のような生活を送っている。9×9の将棋盤の右隅に、王が隠れ潜む。その周りを香車、桂馬、銀、金2枚で取り囲む。上部はずらり横一列に歩(歩兵)が守っている。その王の気分だ。

 敵から一番遠いところに身を置くことによって、敵の攻撃に時間をかけさせる利点がある。結局は1枚1枚、周りの駒を剥がされていくが、守りが堅いので詰まされるまでさらに時間を稼げる。この戦法では、王は動かないことが肝要だ。動けば、敵の攻撃を受けやすくなる。

 暫定税率が元に戻って、ガソリン価格が急騰した。ガソリン関連商品がやがてじわじわ上がってくる。また、小麦粉の価格が上がり、関連商品の値段が上がり続けている。どちらも生活の基幹部門だけに、その広がりは計り知れない。

 大豆、トウモロコシ、牛乳も品不足から価格が上がっている。これら関連商品の広がりも大きい。中国やインドの経済発展のせいにするが、大きな要因は世界市場にうごめいている巨大マネーだ。石油価格を散々いたぶったので、今度は穀物市場に狙いを移した。人間にとってどうしても必要な物は、結局買わざるをえないから、リスクが少ない。まさに穀物畑が「食い物にされている」。

 交通機関、流通、パン、ビール、牛乳、バター、パスタ、醤油、ソース、電気、ガス・・・・・・すべてが上がりつつある。街を歩けば、これらの物に頼らざるをえない。財布から1000円札、1万円札が次々消えていく。だから、出来るだけ出歩かないようにしている。もちろん、閉じ籠もっていても、じわじわと迫っては来るけれど、「破滅」までの時間は稼げる。

 だが、「穴熊」戦法のもう一つの側面は、激しい攻撃にある。「王」は動かないが、残りの飛車や角は相打ちを覚悟で敵陣に切り込んでいく。堅い守りを頼りに、守りを手抜きして敵に挑みかかる。1手先に相手の玉を詰ませればいいのだ。じーっとしているようで、実は内に秘めた怒りや攻撃性は半端ではない。

 ところで、自民党は郵政民営化選挙の恩恵を手放さないまま、やりたい放題である。暫定税率では、参議院で否決されたと見なして、衆議院で3分の2をもって再可決した。ここ2〜3日は、ガソリンスタンドに誰も行かないが、やがて給油せざるをえなくなる。127円が157円になっている。その時、怒りがこみ上げてくるはずだ。物価が次々上がる中、わずか2兆6000億円の減税さえも出来ないのだ、この国の指導者は。無駄な公共事業、特別会計の埋蔵金、消えた年金、不必要なODA・・・・・・、先に正すべき事柄はたくさんあるにもかかわらず。

 暫定税率の問題は、お金をわが手にしたい政治家(地方の知事を含む)&官僚たちと、税金を取られる庶民との戦いだった。福田内閣の支持率低下が、庶民の怒りを現している。朝日新聞の世論調査ではとうとう20%になった。10%台に落ちるのは時間の問題だ。政党支持率でも、自民党(24%)は民主党(28%)に逆転された。

 福田首相は、胡錦涛国家主席との日中首脳会談にわずかな望みをつなぐが、毒入り餃子事件の解決にはほど遠く、パンダを贈られてお茶を濁されるのが目に見えている。政権基盤の弱さを見抜かれ、適当にあしらわれる様子は見たくない。

 庶民を「穴熊」だと侮っていると、手痛いしっぺ返しに遭いますぞ。ところで、パンダは・・・・・・、「熊猫」だったっけ。
レギュラー出演者
森 啓次郎
森 啓次郎
「Asahiパソコン」「ぱそ」「週刊朝日」編集長を経て、現在、大学講師(メディア論)。