朝日グループのニュースチャンネル
文字サイズ 大 標準
朝日ニュースターとは視聴方法よくある質問サイトマップHOME
週間番組表月間番組表番組一覧プレゼントご意見・ご感想メールマガジン
視点
放送内容
森啓次郎エッセイ
森啓次郎エッセイ
4/11(金)
混乱する聖火リレー、安定するガソリン価格

 朝のNHKニュースを見ていたら、ガソリン価格が下がったために車に乗る人が増え、CO2の排出量がこの1年間で大幅に増加するというどこかの研究所のデータを紹介していた。だから、暫定税率は元に戻さなくてはならないと言いたかったようだ。とんでもない。

 計算の前提が間違っている。おそらく、これまでと同じ額のお金がガソリンに使われるとして計算したのだと思うが、そうはならない。ガソリンが安くなったから、たくさん車に乗るようになるという考え方自体が間違っている。

 石油情報センターの発表によると、7日現在のレギュラーガソリン1リットルあたりの全国平均小売価格は、131.2円で、平均21.7円値下がりしたという。暫定税率分は25円だから、まだまだ下がる。が、やがて安定する。

 考えてみれば、ガソリンが131円だったのは、わずか3年前の話だ。5年前は100円台、10年前は100円を割っていた。だから、3年前の水準に戻るというのならわかる。「戻る」と「増える」とでは言葉のニュアンスが全く違う。意図的なものを感じる。これからしばらくは、暫定税率の復活に向けて、政府側からこうしたニュースが流される。姑息なやり方だ。

 福田首相と小沢代表との党首討論を聞いていて愕然とした。福田首相は「暫定税率撤廃で現場は混乱していますよ」と元に戻す理由を述べていたが、混乱は一時だ。このまま、撤廃され続ければ安定する。また上げようとするから混乱が起きるのだ。福田首相もこの際、「野党の反対で、暫定税率は撤廃された」と開き直ってみたらどうだろう。2兆6000億円の大型減税を行った名宰相として後世に名が残る。

 似たようなチャンスは前にもあった。ペルシャ湾での自衛隊による給油活動だ。あの時も「混乱する」と言っていたが、結局、給油活動を止めても混乱は起きなかったし、再開してもとりわけ感謝されることもなかった。やめておけば、国民から拍手が沸き起こったに違いない。福田首相は石油に祟られている。

 ところで、聖火リレーの方は「混乱」が起きている。ロンドン、パリ、サンフランシスコ。ブルーのユニフォームを着た「聖火防衛隊」が、リレー走者の掲げるトーチを取って、いとも簡単に炎を消すのを見て、いったいリレーしている聖火とは何なのか、リレーすることに意味があるのか不思議な感覚に陥った。リレー走者も呆気にとられていた。「消される」のは困るが、「消す」のは構わないらしい。それならば、いっそ種火だけを運べばいい。

 11日はアルゼンチンのブエノスアイレスに渡る。マラドーナが第1走者だという。スペインからの独立記念日に由来する「7月9日通り」を走る予定だ。横幅140メートル、片側9車線のメインストリート。あの広い通りをどうやって警備するのだろうか。1980年に車で走ったはずだが、遠い記憶だ。スペイン風の古い街並み、レストラン「ラ・エスタンシア」の肉の塊、名前は忘れたが、アルゼンチンタンゴの店の歴史ある趣などの方が鮮明に覚えている。「いい空気」(ブエノスアイレス)のはずが、車の排気ガスで「マロスアイレス」(悪い空気)になったと地元の人が苦笑いしていた。

 聖火はやがてオーストラリアを経て日本にもやってくる。26日に長野市の善光寺をスタートする。ゆっくりではなく、マラソン並みのスピードで走ったらどうか。それでも奪い取られたら、気にせず、また新しいトーチを伴走車から受け取ればいい。
レギュラー出演者
森 啓次郎
森 啓次郎
「Asahiパソコン」「ぱそ」「週刊朝日」編集長を経て、現在、大学講師(メディア論)。