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放送内容
森啓次郎エッセイ
森啓次郎エッセイ
3/21(金)
駐車違反、申告したらバカを見た

 車を4度目の車検に出した。整備されて車は戻ってきたが、その3日後、担当者から慌てた声で電話が入った。

 「車検証が出ないんです」

 詳しく聞くと、交通違反を起こしていて、その違反金が未納のため、車検証を発行できないと言われたらしい。全く身に覚えがないため、さらに尋ねると、駐車違反だという。「放置駐車対策センターに連絡を取って欲しい」と、違反番号を教えられた。

 駐車違反ならば、「お金を払え」という督促状が自宅に届いていてもよさそうである。しかし、そうしたものは一度も目にしていない。

 係員と話してわかったことは、車検証に書かれている住所と現在の住所が引っ越しによって異なっているために、督促状が送られても戻ってしまった可能性が高いという。似たような人は世の中にたくさんいるに違いない。

 どうやら違反は1年ほど前のことで、場所もわかった。その日、隣に住む奥さんが「車を貸してください」と飛び込んできたことがあった。子どもが食べたものを吐いて高熱を発したためである。クリニックまで車を走らせ、その真ん前に駐車した。診察を終えたら駐車違反の紙が貼られていたという。奥さんの話では、すぐに紙に書かれていた警察署に電話し、「子どもが急病のために、やむを得ず駐車した」と説明したところ、警察官は「事情はわかりました」と言ったという。その後、何の音沙汰もなかったので、警察官が事情を理解し、駐車違反にしなかったのだと思っていたようだ。

 奥さんは「私の責任だから」と警察署に同行してくれた。警察署でのやりとりは、係官が出たり入ったり、入れ替わったりで2時間ほどに及んだ。途中経過を省いて、結論だけを書くと、警察の言い分はこうだ。

1.急病人でも駐車違反の除外規定はない。
2.督促状は3度送られている。それに対して何の返事もなかったので、弁明の機会も失われている。
3.督促状が届かなかったのは、車検証の住所が現住所に変更されていなかったからで、所有者の責任である。

 しかし、だいたい車検はディーラーに任せっぱなし。引っ越してからもう3度も車検を受けているのに、その間、何の指摘も受けていない。

 で、すったもんだの挙げ句、出た結論はこうなった。車の所有者である私には、納付書を出す。これを金融機関で払い、その領収書を持って行けば、車検証は発行される。

 奥さんについては、「申告を聞いてしまったので」改めて違反切符を出す。罰金を払うなり、弁明をしたいのならその機会が与えられる。同時に駐車違反で点数を2点引く。この2点は、弁明が通っても戻されることはないのだという。不思議な制度だ。違反ゼロのゴールデンの免許証に傷がついてしまったと嘆いていた。奥さんが違反金を払えば、私の納付金は還付されるらしい。二度手間だけど、車検切れが迫っているので仕方ない。

 参考のために聞いてみた。「もし私が一人で出向いて納付書だけを受け取りに来た場合は、どうなったのか」と。駐車違反は誰が運転していたのかわからないために、違反「者」ではなく違反「車」に請求が行く。つまり、黙っていれば誰も免許証から減点されることはなく、事が済んでいたのだ。正直者はバカを見る。

 1万5000円で「確信犯的」に子どもの命を救ったと考えるほかない。
レギュラー出演者
森 啓次郎
森 啓次郎
「Asahiパソコン」「ぱそ」「週刊朝日」編集長を経て、現在、大学講師(メディア論)。