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森啓次郎エッセイ
森啓次郎エッセイ
3/14(金)
「きぼう」のない地上の円高ドル安

 急激なドル安が進んでいる。サブプライムローン(低所得者向け住宅ローン)の焦げ付きで金融不安に陥っているためである。FRB(米連邦準備制度理事会)は、20兆円規模の対策を打ち出したが、その日1日だけ持ち直しただけで、アメリカ売りは止まらなかった。

 何かに似ていると思ったら、「新銀行東京」だ。きちんとした調査を行わないまま、融資拡大を図ったためにその多くが焦げ付いてしまった。経営難に陥っている。破綻を防ぐために石原都知事は400億円の追加出資を打ち出しているが、おそらく「1日」だけ不安は取り除かれても、すぐに元の木阿弥になるだろう。延命策は、結局何の意味もなさない。

 1ドル=100円を割った。まだまだドルは下がるという。世界の金融市場には、より儲かる場所を求めて巨額の資金がつねに流れ込んでいる。その代表がオイルマネーだ。中東だけではない。ロシア、アメリカ、メキシコ、カナダ、ベネズエラ・・・、ブルネイ。それらに運用によって資金を増やす必要がある機関の金が加わる。顧客から集めた貯金や保険金などである。国家のお金も投資に回されている。ドル安が底を打つまで、ドルは売られ続ける。

 お陰で円高である。外国に旅行する人にとっては朗報だ。昨年の今ごろは1ドル=120円ほどだった。1泊300ドルの高級ホテルに泊まった人は、3万6000円払っていた。今年は、同じホテルに3万円で泊まれる。差し引き6000円得をする。

 反対にアメリカ人は日本を旅行しにくくなる。1泊3万円のホテルに、去年なら250ドルで泊まれたのに、今年は300ドルかかる。50ドルも高くなってしまった。

 物を輸出している会社には打撃だ。例えば1台200万円の車を売っている会社は、去年なら1万6667ドルの価格をつければよかったが、今年は2万ドルにしなければならない。約3333ドルも高くなる。もっとも、最近は現地生産が基本だから、車の価格自体は変えなくてすむかもしれない。しかし、売り上げの方は落ち込む。昨年100億ドル(1兆2000万円)儲けた企業は、今年は同じ100億ドルで1兆円しかならない。2000億円の減益である。

 インターネットで調べたら、今日現在のニューヨーク・ロト、その中で最高賞金が出る「メガミリオンズ」の賞金は59ミリオンドル(5900万ドル=59億円)だった。去年だったら70億8000万円。11億8000万円が為替相場で消えてしまった。

 ところで、日本国内では値上げラッシュが続いている。小麦粉、大豆、乳製品などが軒並み上がっている。ビールも値上げされつつある。今年から年金生活に入った団塊の世代は、悲鳴を上げている。せめてガソリン代くらいは下げてほしい。暫定税率は無駄金使いの温床だ。何もせずにジャブジャブ入ってくるお金ほどたちの悪い物はない。必要のない道路を造って環境を破壊し続けている。

 前にも書いたが、サルに人間が餌を与えると、自然のサル社会のルールが壊れる。それまでの知恵があって創意工夫に富み、将来を見通せる賢いリーダーが追い出され、単に声が大きく腕力が強いサルがボスになる。餌を探さなくてよくなるからだ。暫定税率は、人間がサルに与える餌のようなものだ。庶民が官僚・政治家たちに与える餌だ。

 土井隆雄さんがエンデバーで飛び立った。「きぼう」は宇宙にしかないのかもしれない。
レギュラー出演者
森 啓次郎
森 啓次郎
「Asahiパソコン」「ぱそ」「週刊朝日」編集長を経て、現在、大学講師(メディア論)。