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森啓次郎エッセイ
森啓次郎エッセイ
3/7(金)
「目に花粉 桜ウグイス 初黄砂」

 目がかゆい。2日前から突然かゆくなった。3月初め、花粉が飛び始めたというニュースを聞いて薬を飲み始めた。アレルギー防止の薬だ。2〜3日は効いていたが、その時、黄砂が飛来した。0.005ミリ以下の小ささ。最近の黄砂には、有害な化学物質がくっついている。

 いつもはよく見える遠くのビルが霞んで見えない。なるべく外に出ないようにしたが、それでもかなり目に飛び込んできた。この時期、北京を訪れたことがある。紫禁城の入り口から見ると、正面の建物が霞んでいたほどだ。目は開けられないし、喉は泥だらけになる。東京での黄砂なんてかわいいものである。

 しかしそこに、大量の杉花粉が東京を襲い始めた。「弱り目に祟り目」。とうとう薬が効かなくなった。一度かゆくなって目をこすると、もうダメだ。こすりたいという誘惑に勝てず、こするとますますかゆくなる。3月、4月は花粉症の人にとっては残酷な季節だ。卒業、進学、入学、入社と華やかなイベントの裏で、クシャミと鼻づまりを起こしている。

 黄砂が来たと思ったら、代わりに野菜がストップした。餃子事件の影響で、中国政府が検疫強化を打ち出し、輸出を止めた。タマネギ、ショウガ、ネギ、サトイモなどが品不足を引き起こしている。日本に揺さぶりをかけていると見えなくもない。輸入にどっぷり浸かっている日本の消費者が音を上げる日も近いと踏んでいるに違いない。輸出できなければ、中国の農家、食品工場、貿易関係者も困るはずだが、どちらが先か国家がらみのチキンゲームが行われている。気をつけなければならないのは、ゲームのはずがいつの間にか政治や過去の歴史が絡み、遺恨試合に発展してしまうことだ。「食料戦争」の様相が見え始めている。

 全国人民代表大会で温家宝首相は、「人民大衆が安心できる食品を提供し、信用のある輸出品をつくるようにしなければならない」と演説した。上層部は事の本質をわかっているが、それが末端まで行き渡っていない現状がある。生産がすでに禁止されているメタミドホスが、堂々といまだに作られ、農家で使用されているレポートがあった。

 日本政府も、きちんとしたメッセージを送らなければならない。「毒入り餃子事件で問題なのは、明らかな食中毒を引き起こした2つの事件の解明であって、その他の野菜の残留農薬と思われる微量の検出は、また別の問題である」と。人が死ぬかもしれないほどの大量の農薬がどうやって混入したか、それが解明すべき一番の問題なのだ。

 野菜や穀物、果物などに残留農薬が残っているのは、残念ながら日本でも日常的に起きていることだ。ただ、禁止薬品の使用が解った場合は、厳しい処分が行われる。処分だけでなく、消費者が一切買わなくなるので、そちらの方が生産者にとってはむしろ怖い。また、海の汚染によって、魚にも有害な化学物質が含まれていることもわかっている。大気汚染、土壌汚染、海洋汚染、地球温暖化による害虫の発生とさらなる農薬の使用・・・世界的規模で解決しなければならない多くの課題がある。多少の「毒入り」を承知で食べるかどうか選択の時代なのだ。

 近くの公園に河津桜が咲いていた。緑色の小さな体をしたウグイスが飛んできて、蜜をあさっていた。こちらの花粉は目をかゆくしない。

 「目に花粉 桜ウグイス 初黄砂」

ウグイスだけでなくヒヨドリもやってきた。.JPG
レギュラー出演者
森 啓次郎
森 啓次郎
「Asahiパソコン」「ぱそ」「週刊朝日」編集長を経て、現在、大学講師(メディア論)。