朝日グループのニュースチャンネル
文字サイズ 大 標準
朝日ニュースターとは視聴方法よくある質問サイトマップHOME
週間番組表月間番組表番組一覧プレゼントご意見・ご感想メールマガジン
視点
放送内容
森啓次郎エッセイ
森啓次郎エッセイ
12/14(金)
「艦船給油」より「感染救済」を!

 福田首相に「名宰相」になるチャンスが訪れた。フィブリノゲン製剤によるC型肝炎患者に、一律救済の政治決断を下せばいい。

 全国で起こされている訴訟の原告は約200人。製薬会社の推定では、約1万人の薬害患者がいるとされる。多くの人は、自分が薬害によって肝炎になったと知らないのかもしれない。麻酔を打たれて、手術中にこの血液製剤を投与された人がいるからだ。中にはすでに死亡している人もいるし、まだ重い症状が現れていないために気づかない人もいる。あるいは、薬害だと気づいても、病院にカルテが残っていないために訴えることが出来ない人もいる。

 C型肝炎は、血液を介して感染する。フィブリノゲン製剤の投与だけでなく、輸血、注射器の使い回し・・・など、そのほとんどが不適切な医療行為によって感染したと言っていい。その数200万人。

 福田首相が口をモゴモゴさせているのは、背後に事実を認めたくない官僚たちの存在がある。「一律救済」となると、いったい何万人にまで広がるのか見当もつかないからである。

 しかし、最も重要なことは、肝炎を治すために医療体制を整えることだ。「国立がんセンター」があるように、「国立肝炎センター」を造ったり、あるいはすでにある「感染症のセンター」をより充実させたりする必要がある。

 C型肝炎は完治しない病気だ。インターフェロンによって進行を止めることは出来る。しかし、副作用もあり、通院に時間がかかることもあって、日常生活が営まれなくなる。もちろん医療費もかかる。途中で治療を投げ出した患者も多い。日常生活支援のための援助金、治療費、何よりも新しい治療法への研究費の増額が望まれている。

 ところで、「テロ特措法」による給油活動で、日本は派兵費用も含めて、600億円近いお金を使った。政府は「新テロ特措法」をつくってさらに何百億円という金をアメリカの艦船のために使おうとしている。

 「艦船給油」の費用を「感染救済」に回したらどうだろう。アメリカ政府には「野党の反対で新テロ特措法は廃案になってしまった。無理強いすると、自民党政権自体がもたない」と「嘘」をつけばいい。「偽り」とは「人の為」と書く。

 それでもお金が足りなければ「埋蔵金」を使えばいい。この国は年間予算が約80兆円なのに、官庁の裁量で使い道を決められる特別会計が、倍以上の175兆円もある。そして、使われない繰越金が20兆円もある。イザと言うときに備えたものと説明するが、今が「イザという時」なのではないか。首相の裁量で1兆円ほどを掘り出して、肝炎対策に充てれば、「よっ、名宰相!」の声がかかる。肝炎対策は全国民の「為」にもなるからだ。「給油廃止」で湾岸周辺のイスラム国家から賞賛の声も上がる。

 前首相のずっこけで「どうせ拾った請いだもの」、この際、すべてを前首相と野党の横暴のせいにして、シラっと善政をおこなってはいかがだろうか。

 年金問題にしても、「公約違反というほど大げさなものなのかどうか」などと人ごとのように言い訳しないで、「前首相が選挙公約として掲げたが、実行できないことがわかって、その責任を取ったと承知している」と謝って、「消えた年金の解明に全力を尽くします」と言えばいい。

 手帳の残りもあとわずかになった。最後に絶妙な「福式呼救」を見てみたい。
レギュラー出演者
森 啓次郎
森 啓次郎
「Asahiパソコン」「ぱそ」「週刊朝日」編集長を経て、現在、大学講師(メディア論)。