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森啓次郎エッセイ
森啓次郎エッセイ
10/19(金)
「亀田はだめか」

 やってみたい実験がある。電車の優先席に座って、突然、「うううっ」と胸を押さえて苦しみながら、「携帯の電源を切ってください!」と叫ぶのである。倒れ込むと迫力が増すかもしれない。もちろん、心臓ペースメーカーが埋め込まれている演技である。

 おそらく、何人かがあわてて携帯の電源を切り、何人かがその場からスーッといなくなるのではないかと思っている。

 車内アナウンスではよく「優先席付近では携帯電話の電源を切り、その他の席ではマナーモードに切り替えてください」と流されているが、果たして守っている人がどのくらいいるのか甚だ疑問だからだ。

 携帯電話の電波はかなり強力らしい。つい先日も、長崎空港で全日空662便が離陸時に無線が使えなくなり、駐機場に引き返した。その後、通信機器に異常が出ているので「携帯電話の電源をお切りください」と機内アナウンスしたところ、正常に戻ったという。

 脳への影響はすでに指摘されている。ニューヨークでは、多くのビジネスマンがイヤホンと小さなマイクを使って話していた。脳腫瘍の危険から身を守るためである。携帯を耳にあてがわずにしゃべっているのは、奇妙な光景ではある。

 人間の体には電気信号が流れている。心臓ペースメーカーではなくとも、影響があるかもしれない。最近は胸のポケットに入れるのを止めた。体から離して持ち歩くようにしている。

 話は脱線したが、ポスターやアナウンスだけでマナーを訴えている光景によく出会う。一番いい例は「歩きタバコ」の禁止や「ポイ捨て」の禁止だ。現在では、東京23区のほとんどの区が条例を作っている。守るべきルールとしている区もある。

 一番早かったのは千代田区だ。施行は2002年10月1日。確か過料2000円で、最初のうちは区の職員が路上に立って違反者から罰金を取っていた。その後、杉並区、大田区、品川区などが続いた。

 しかし、「歩きタバコ」だけ禁止の区や「ポイ捨て」だけ禁止の区や両方禁止の区などがあり、かつ過料を科す区や罰則規定のない区、単なるルールとしている区など対応はまちまちだ。例えば、新宿区は「喫煙所以外での路上喫煙を全て禁止」しているが、罰則規定はとくに設けられていない。

 仕事の関係で、中央区、港区、渋谷区、新宿区などを歩くことが多いが、条例やルールは全く守られていない。「歩きタバコ」も「ポイ捨て」も堂々と行われている。注意をしたり、取り締まりをしたりする区の職員を見かけたことがない。路上駐車の取り締まりはよく見かけるのに・・・。せいぜい路上にペンキで「歩きタバコ・ポイ捨て禁止」マークが書かれているだけだ。

 条例を作っておいて何も行動しないのは、単なるポーズに過ぎない。嫌煙団体とタバコ会社、双方にいい顔をしていると疑われても仕方ない。心臓ペースメーカーの事故や飛行機事故、子どもの失明事故が起きてからでは遅い。

 ボクシングにも禁止のルールがある。それまでの反則行為を注意せずに見逃してきていたから、図に乗って世界戦でも同じことをした。チャンピォンが大怪我をする危険性もあった。抱え投げの亀田大毅選手に、1年間のボクサーライセンス停止処分が下った。

 もう「亀田はだめか」。
レギュラー出演者
森 啓次郎
森 啓次郎
「Asahiパソコン」「ぱそ」「週刊朝日」編集長を経て、現在、大学講師(メディア論)。