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森啓次郎エッセイ
森啓次郎エッセイ
8/31(金)
「いつの日か君もネットカフェ難民」

 「ネットカフェ難民」―――厚生労働省の専門用語では「住居喪失不安定就労者」と呼ぶ。その実態調査が初めて発表された。

 調査は2段階で行われた。第1次は、全国の24時間営業のインターネットカフェや漫画喫茶(3246店舗)の店長・店員に電話をかけ、オールナイト利用者のだいたいの実態を調査。第2次は、それを基に対象店舗を146店舗に絞り、実際に店舗に調査員が出向き、オールナイト利用者にアンケート用紙を配って回収した。調査は、今年の6月下旬から7月中旬にかけて行われた。

 店舗によっては非協力的だった。理由は、「難民」という言葉に反発したためだ。「お客様は難民ではない」。実際、報道による風評被害で利用者が減少したと訴えている。

 で、いろいろあった調査結果は―――オールナイト利用者は1日6万900人(うち常連客は2万1400人)で、その7.8%(4750人)が「住所喪失者」だとした。これに、調査日にたまたまネットカフェを利用していない人も加えて補正すると、全国の「ネットカフェ難民」の総数は約5400人と結論づけた。

 この問題に取り組んでいる専門家は、実態より少ないのではと指摘している。理由は、「ネットカフェ難民」と一言で言っても、ある時は「マンガ喫茶難民」であり、ある時は「路上生活者」であり、またあるときは「ファーストフード難民」であり、さらにあるときは「サウナ難民」でもあるからだ。

 調査でも、「ネットカフェ・漫画喫茶」以外にどんな場所で寝泊まりしていますか、という質問があり、それによると東京の場合、「路上」(29.5%)、「ファーストフード店」(23.7%)、「サウナ」(23.2%)、「カプセルホテル」(16.1%)、「友人宅」(7.6%)、「カラオケ店」(3.1%)、「簡易宿泊所(ドヤ)」(3.1%)、「ビジネスホテル・旅館」(2.7%)などが挙がっている。中には、「夜は起きていて昼に図書館などで寝る」というのもあった。「ネットカフェ」だけと答えた人はわずか4%しかいなかった。

 お金が全くないときは、路上生活者となり、たくさん入ると、ホテル系に泊まり、わずかの時は「ファーストフード」で椅子に座ったまま寝ている実態が浮かび上がってくる。

 収入は「派遣以外のアルバイト・パート・契約社員」で得ている人が圧倒的だ。全体の57.9%(東京の場合)を占めている。そのうちのほとんど(79%)が長期ではなく1日ごとの雇用である。派遣労働者は18.1%、正社員は1.2%にすぎない。住所が不定なので、日雇いで食べつないでいることがわかる。

 収入は1カ月11.3万円。1日3767円。そのほとんどが寝泊まり賃と食費で消えている。
年齢構成は20代(26.5%)と50代(23.1%)に山がある。「難民」化した理由は、職を失い、家賃が払えなくなり、アパートを追い出されたというものが、一番多かった。

 ところで、総務省の1〜3月の調査では、非正規雇用者は全国で1726万人もいる。今や雇用者全体の33.7%だ。政府が派遣労働の対象業種を次々と拡大させてきたからだ。正社員を減らし、派遣やパートで代替させて企業は景気がよくなった。しかし、反面、個人消費は伸びない。「景気に力強さがなく」、「景気回復の実感がない」のも当然だ。

 この国は、派遣労働者→ネットカフェ難民→路上生活者と切れ目なくつながっている。
 
 いつの日か君も「ネットカフェ難民」と化す。
レギュラー出演者
森 啓次郎
森 啓次郎
「Asahiパソコン」「ぱそ」「週刊朝日」編集長を経て、現在、大学講師(メディア論)。