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森啓次郎エッセイ
森啓次郎エッセイ
7/20(金)
「家を造るなら」

 もし宝くじが当たったら、家を造ろうと思っている。地震に強い家を造ろうと思っている。

 地震に強い家の条件は、ライフラインからの独立だ。大地震では多くの場合、ライフラインが寸断される。電気、ガス、水道、通信・・・。このうち電気は比較的早く復旧する。切れた線をつないでいきなり電気を流しても、それほど問題が起きないからだ。

 水道はそうはいかない。破壊箇所がわからないまま、栓を開けると、水が道路にあふれ出し、陥没が起きたりする。地区ごとに異常を調べ、徐々にあけていく。電気が早いところでは翌日から復旧し始めるのに比べて、水道は普通1週間以上かかる。

 一番遅くなるのは都市ガスだ。全ガス管を調べてから栓を開けないと、ガス漏れでガス中毒や爆発事故の危険があるからだ。完全普及するまでに1カ月以上かかるのが一般的だ。

 地震で被害が出ると、全国のガス会社や水道会社から応援部隊が来る。しかし、大都市が巨大地震に襲われたら、おそらくもっと日数がかかるに違いない。

 そこで、この家はライフラインからなるべく独立させる。耐震構造の家の屋根には太陽光発電のパネルを貼る。屋根だけで足りなければ、壁の一部にも貼る。地下には大きな蓄電池を設置し、ひたすら電気をためておく。

 冬に起きると暖房が必要になる。石油ストーブでもいいが、家屋内に灯油をためておくと、火事が怖いので、こちらは薪ストーブを設置しよう。上で調理も出来るし、お湯も沸かせる。

 問題は水だ。井戸を持っているのが理想的だが、都会では水道に頼るしかない。そこで一番の問題は、水洗トイレだ。最低1週間分の水を事前にためておく必要がある。屋上にタンクを置くと、安定が悪いし、地震で倒れる危険があるので、位置的には中2偕あたりがいい。重心を考え、家の中心に大きな水タンクを家の一部として組み込む。そして、1階のトイレ専用として普段から使うようにしておく。

 飲み水用には、ミネラルウォーターをたくさん買っておく。2リットル6本入りで、20箱くらいあればいいだろう。風呂は我慢する。

 ガスは、卓上用コンロが2〜3台あればいい。ガスの復旧がかなりかかることを考慮して、ガスボンベはかなり用意しておく。通信は復旧を待つしかない。

 問題は食糧だ。こちらは冷凍庫のお世話にならざるをえないが、太陽光発電の電気は、まず、この冷凍庫に優先的に引いておく。もちろん保存がきく米やパスタ類、缶詰類は日頃から買い置きし、順番に使っていく。

 さらに念のため、庭があれば、日頃から野菜や果物、米などの穀類を作っておく。

 水にしても食料にしても、重要なのは、地震のためだけにしまい込んでおかないことだ。いざというときに、消費期限が過ぎて使えなくなってしまうからだ。日常的に使って、つねに補充していくことが重要だ。

 さて、家の中には物入れをたくさん作り、すべて扉の中にしまう。とくに寝室には倒れると危険な物を一切置かない。箪笥や食器棚はなるべく作り付けにするが、もしどうしても必要ならば、すべて扉の中にしまっておく。

 建てる場所は重要だ。埋め立て地や造成地は地盤が弱い。崖下は崖崩れの恐れがある。昔からある丘陵地帯が理想的だ。

 設計図は出来た。あとはロトが当たるのを待つばかり。
レギュラー出演者
森 啓次郎
森 啓次郎
「Asahiパソコン」「ぱそ」「週刊朝日」編集長を経て、現在、大学講師(メディア論)。