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森啓次郎エッセイ
森啓次郎エッセイ
5/25(金)
「見栄え好きで、『薬』嫌い」

 大きくて肉厚のシイタケ。焼いて、醤油だけをつけてそのままステーキ風に食べる。日本産の、どちらかというと貧弱なそれより、味はともかく値段が格段に安かった。

 肉厚の日本産シイタケは、高級品で手が出せなかった。しかし、今はもう買うことはない。中国産シイタケから基準を超す農薬が見つかったからだ。

 テカテカに光ったウナギの蒲焼き。大きさは巨大ではないが、鹿児島県産に比べると、半分ほどの値段で買えた。ウナギは何よりの好物だ。しかし、使用が許されていない合成抗菌剤が中国産から検出されて以来、一度も買っていない。狭い場所で大量に飼うと、病気を防ぐために抗生物質を投与する業者がいる。

 中国の生産者が自分たちの判断で行ったとはとても思えない。日本の輸入業者が、日本人の好みを教え、その安易なごまかしの「技術」を教え込んだにちがいない。

 真っ直ぐに伸びたキュウリ、白い部分が長いネギ、肉厚のシイタケ、虫に食べられていないシュンギク・・・、そうでないと日本では売れないと指導したにちがいない。

 巧みに日本の法律をくぐって輸入されていた。それまでの日本の食品衛生法では、残留農薬の基準が設定されていない農薬については、全く規制がなかった。基準が設定されている農薬のみ、基準を超えた場合に販売禁止になった。「ネガティブリスト制度」と呼ばれる。

 これに対して2006年5月、やっと法律が改正され施行された。改正から施行まで3年間の準備期間が設けられた。基準が設定されていない農薬については、一律基準(0.01ppm)を超えた場合に販売を禁止することができるようになった。「ポジティブリスト制度」と呼ぶ。

 新しい制度の導入で、中国産野菜の輸入量はいったん大きく落ち込む。しかし、すぐに盛り返してきた。違反例も後を絶たない。

 ところで、中国国内や香港では、別種のキノコに薬品で色をつけ「キクラゲ」として売っていた例や、デンプンに香料を混ぜて「粉ミルク」として売っていた例が報道されている。この偽粉ミルク事件では、「229人の赤ちゃんが栄養障害に陥り、12人が死亡した」とある。

 発ガン性着色料でおいしそうに染めた卵や湯葉やフライドチキン、農薬だらけのイチゴなども売られている。抗生物質やホルモン剤が過剰投与された牛乳も問題になっている。

 ニュースは断片的にしか入ってこない。中国の農産地で一体どのくらいの規模で、こうした不正が行われているのか、なぜ取り締まれないのか、全容が伝わってこない。

 中国政府は21日、食品の安全に関する「国際会議」を北京で開いた。「国際社会と協力して、品質確保の方策を探っていきたい」と担当責任者は述べた。

 中央の意気込みと地方の現場の意識との間に、かなりのギャップが感じられる。

 農薬、着色料、添加物、抗生物質―――振り返ってみると、日本でも似たようなことがいまだにまかり通っている。今年1月、栃木県産のイチゴ「とちおとめ」から、基準を超える農薬が検出されたばかりだ。
消費者が見栄えで買うから、生産者は薬を使い、薬を使ったことが分かると消費者は買わなくなる。卵が先か鶏が先か。

 「農薬で シイタケられて 見栄えよし」
 「抗菌剤 使うなぎむ(義務)だ でも安い」
 う〜ん。
レギュラー出演者
森 啓次郎
森 啓次郎
「Asahiパソコン」「ぱそ」「週刊朝日」編集長を経て、現在、大学講師(メディア論)。