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森啓次郎エッセイ
森啓次郎エッセイ
4/20(金)
「銃は銃で守れない」

 東京・池袋の繁華街で通行人を次々襲った造田博被告に死刑判決が確定した。彼は包丁と金槌を手に2人を殺害し、6人に重軽傷を負わせた。もし、この男が拳銃を持っていたら、どうなっていただろうか。

 大阪府の池田小学校を襲った宅間守。出刃包丁を手にした彼は、児童8人を殺害し、15人に傷害を負わせた。彼が銃を手にしていたらどうなっていただろうか。

 そんな思いを抱いたのは、アメリカ・バージニア工科大学で銃乱射事件が起きからだ。韓国人学生チョ・スンヒ容疑者は、2丁の銃を手に32人を殺害した。「おまえたちはすべてを持っている」と富裕層に対する屈曲した恨みを述べている。

 宅間守は、「エリートの子供」を狙った理由として「絶望的な苦しみをできるだけ多くの家族に味わわせてやりたかった」と述べていた。女性にストーカー行為をしていた点もチョ・スンヒ容疑者と共通している。

 驚いたのは、銃規制反対の団体代表が「もしも、犠牲になった学生が一人でも銃を持っていたら、多くの命が救えたかもしれない」と述べていたことだ。アメリカでは、銃で自分の身を守ることが憲法で保障されている(とされる)。「銃の下で人々は平等になれる」という建国以来の精神が根強くあるという。腕力のない人(例えば女性)が、屈強の男たちに襲われたとき身を守れるのは銃だけだという考えがある。

 毎年3万人もの人々が銃で命を奪われながら銃規制が進まないのは、明確なアンチテーゼが出せないでいるからだ。

 銃は「疑心暗鬼」を生む。相手から先に撃たれるかもしれないという恐怖だ。1992年にルイジアナ州バトンルージュで起きた服部君射殺事件。ハロウイーンの夜、パーティ会場を間違えて民家に入ろうとした日本人留学生が、持っていたカメラを銃と間違えられて、撃たれた。銃は「やられる前にやる」という感情を生みやすい。

 さらに武器はエスカレートしていく。相手が高性能の銃を持てば、それに対抗するためにより強力な銃を手にするようになる。服部君は照準スコープ付き44口径のマグナムで撃たれた。アラスカでコルト45(口径)マグナムを手にしたことがあるが、グリズリー(体重400〜500キロもある巨大なハイイログマ)に襲われたときに使う銃だった。
 
 もし、学生たちが大学構内で日常的に銃を持っていれば、容疑者はより強力な武器を手にしていたはずだ。おそらく連射できるマシンガンだったはずだ。銃に銃で対抗すれば、犠牲者の数はより多くなるだけだ。

 「疑心暗鬼」「エスカレート」の先にあるのが「イラク戦争」だ。

 長崎市長の射殺事件の裏には、単なる個人的恨みではない邪悪な匂いが漂っている。暴力団の本当の狙いは他の人物、組織であるかもしれない。全国の他の地域で山口組と行政が衝突しているところがないのか、徹底的に調べる必要がある。「長崎の二の舞になるぞ」という脅しが有効に働くからだ。暴力団が堂々と銃を所持している現実こそ問題だ。警察の取り締まりが手ぬるい証拠だ。

 ところで、先週のエッセイで「日本の免許証の裏には『備考』とあるだけだ」と書いたが、その「備考」の下に縦12ミリ、横75ミリの細長いスペースがあった。「この欄には、国家公安委員会の定める書面をはり付けることができます」と書かれている。ここに、臓器提供の意思を示す「日本臓器移植ネットワーク」の小さなシールを貼ることが出来る。
レギュラー出演者
森 啓次郎
森 啓次郎
「Asahiパソコン」「ぱそ」「週刊朝日」編集長を経て、現在、大学講師(メディア論)。