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森啓次郎エッセイ
森啓次郎エッセイ
2/23(金)
「鈍感力をお持ちの方々」

 「目先のことに鈍感になれ。(政権運営には)『鈍感力』が大事だ」

 2月20日、塩崎官房長官と中川幹事長を呼びつけ、小泉前首相が檄を飛ばした。塩崎氏には「支持率は上がったり下がったりするもの。気にするな」と言い、中川氏には「閣僚は皆、一家言持っている。まとめる必要はない」と言ったという。

 前々日の18日に、中川幹事長から「安倍晋三首相が、入室したときに起立できない、私語を慎めない政治家は美しい国づくり内閣にふさわしくない」発言が飛び出し、内閣と自民党との間でギクシャクした関係が生まれていた。双方に関係修復を促した。

 『鈍感力』とは、最近発売された渡辺淳一さんの本だ。表紙の副題には「今を生き抜く新しい知恵。渡辺流!男と女の人生講座」とある。タイミングといい、発言内容といい、いかにも「機を見て敏なり」の小泉さんらしい。

 この間の動きをざっとおさらいしておこう。
5日――『鈍感力』発売。この日、中川幹事長が官邸に出向き安倍首相に「闘う政治家として、指導力を発揮するよう」進言。
7日――小泉前首相、中川幹事長、竹中平蔵・慶応大学教授が赤坂で3者会談。
13日――安倍首相と竹中氏が会談。「小泉改革を続行するよう」進言。
14日――NHKの世論調査発表。政権発足以来、初めて不支持(43%)が支持(41%)を上回る。支持率は10ポイント急落。
18日――中川幹事長から「起立せよ発言」。
20日――朝日新聞の世論調査で、不支持率(40%)が支持率(37%)を上回る。この日、小泉前首相が塩崎官房長官と中川幹事長の前で『鈍感力』を訓示。

 一連の流れを見ると、中川幹事長に「起立発言」をさせたのは、小泉前首相自身ではなかったのかと疑いたくなる。赤坂3者会談では、「小泉改革」の続行にあまり熱心でない安倍政権に苦言を呈そうとの申し合わせが行われたのではないか。もちろん、支持率低下の原因(リーダーシップのなさ)を憂いているという共通認識の上で。

 しかし、面と向かって安倍首相を叱り飛ばすわけにはいかないから、「従わない周囲が悪い」と言い出した。「自分が目立つことを最優先する政治家や、野党の追及が怖くて改革を進められない政治家は、内閣・首相官邸から去るべきだ」とも中川幹事長は発言している。いったい誰を指しているのか。

 森喜朗元首相、町村信孝前外相、片山虎之助自民党参院幹事長らの発言を合わせて考えると、こうなる。

 経験がなく、汗をかかない塩崎官房長官、目立ちたがり屋の麻生外相、首相の足を引っ張るベテランの久間防衛相と尾身財務相、リーダーシップに欠ける山本金融相、甘利経済産業相、管総務相、失言続きの柳沢厚労相。さらに付け加えると、起立できない政治家代表の溝手国家公安委員長。おしゃべりの長勢法相、伊吹文科相に、高市少子化担当相ということになる。

 すでに十分に「鈍感力」をお持ちの方々と言ってもよい。内閣のほぼ全員である。これに、「統率できない」安倍首相も加えれば、つまりは「全取っ替え」を意味している。小泉発言は「実は皮肉?」と思いたくもなる。

 山崎拓、加藤紘一、古賀誠の新YKKも登場し、参院選後のポスト争いがきな臭くなってきた。
レギュラー出演者
森 啓次郎
森 啓次郎
「Asahiパソコン」「ぱそ」「週刊朝日」編集長を経て、現在、大学講師(メディア論)。