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森啓次郎エッセイ
森啓次郎エッセイ
2/16(金)
「国民の過半数って何票かな?」

 迂闊(うかつ)なことに「国民投票法案」の重要性について全く考えてこなかった。日本国憲法96条に「この憲法の改正は、各議院の総議員の3分の2以上の賛成で、国会が、これを発議し、(中略)国民投票(中略)において、その過半数の賛成を必要とする」と書かれているので、そうするものだろうと、漠然としかとらえていなかった。

 しかし、安倍総理の最近の言動を見ていると、今国会でこの「国民投票法案」をなんとか通そうと躍起になっているのがわかる。中川秀直幹事長に至っては「5月3日の憲法記念日前に成立を」と張り切っている。

 で、法案を読んでみた。一番びっくりしたのが「国民の過半数」の定義である。自民党案では「有効投票総数の2分の1を超えた場合」とある。民主党案では「投票総数の2分の1を超えた場合」となっている。

 一見そっくりだが、よく読むとかなり違う。自民党案では「賛成するときは○を、反対するときは×を書かなければならない」としている。つまり、白紙で出すと無効票になってしまうのだ。

 これに対して、民主党案では「賛成するときは○を、反対するときは何も書かない」としている。つまり、最高裁判事を罷免するかどうかの国民審査のときの逆である。「罷免するときは×を、何もつけなければ信任したことになる」方式である。これだと、有効投票数は投票総数になる。

 もし、「判断がつかない」、「よく分からない」という理由で白紙の人が多かった場合、自民党案ではより少ない数で、憲法改定が行われてしまう。さらに言えば、改定が多岐にわたった場合、○○条には賛成だが、○条には反対という人は、賛成票を投じるのか、反対票を投じるべきなのか迷う。1項目ごとの賛否を取ることができない方式になっているので、その人は「白紙」を投じる可能性がある。

 もう一つ問題なのは、自民党案、民主党案とも、投票所に行く人の数については言及していない点だ。極端な話、国民がレジャーに遊びに行くような期間を投票日に設定し、有権者の40%の人しか投票しなかったとする。それでも、過半数を取れば成立してしまう。つまり、40%の半分、20%強の人の賛成で憲法が改定されることになる。白票が多ければもっと少なくていい。

 せめて、全有権者の50%以上の投票率を確保しなければ、投票は無効にすべきと思っている。重要性をアピールできなかった失政と位置づけるべきだ。

 有権者の定義にも問題がある。自民党案、民主党とも18歳以上とすることにほぼ合意しそうだという。しかし、一般の国政選挙は20歳以上だから矛盾が生じる。18歳と19歳合わせて270万人いる。

 世界の選挙年齢は18歳以上が主流だ。イギリスやドイツなどでは1960年代後半から70年代にかけて、21歳から18歳に引き下げられた。背景には若者たちの反乱がある。日本でもそうした動きがあったが、「18歳では政治的に未熟」として、見送られてしまった。「過激な学生運動」を見て、ヨーロッパとは逆に恐れをなしたのかもしれない。18歳に統一して、整合性を持たすべきだ。

 新教育基本法、防衛省、次は国民投票法案――安倍総理の頭の中は憲法改定で一杯のようですねえ。春一番が吹き荒れ、もうすぐ春。
レギュラー出演者
森 啓次郎
森 啓次郎
「Asahiパソコン」「ぱそ」「週刊朝日」編集長を経て、現在、大学講師(メディア論)。