12/1(金)
「ポロニウムとダイオキシン」
キューリー夫人が祖国ポーランドにちなんでつけた「ポロニウム」。この放射性物質が、ポーランド上空を越えてロンドン―モスクワ間で運航されている「ブリティッシュ・エアウエイ」(英国航空)の機内から検出された。同時に、ロンドン市内の高級街にあるレストランやホテルなど12カ所からも検出されている。
「ポロニウム210」の多くはロシアの原子炉で製造されている。ウランなど天然物から抽出するのは危険性を考慮すると、ほとんど困難に近い。常識的にはまずモスクワからロンドンに運ばれたと考える方が妥当だろう。もちろん、別の国の航空機でロンドンに運ばれ、英国航空で持ち去られた可能性もある。
不可解な死を遂げたロシアの元スパイ、アレクサンドル・リトビネンコ氏。彼の尿からは、「ポロニウム210」が検出された。モスクワから運ばれたこの物質が、何らかの方法でリトビネンコ氏の体内に注入された可能性が高い。
ロシアのメディアは、「リトビネンコ氏の自作自演」説を流している。密売していて誤って摂取、プーチン政権に打撃を与えるために自ら服毒・・・などだ。
その根拠は、海外で「ポロニウム」を入手する可能性が全くゼロではない点だ。しかし、その毒性を知っている者が、誤って被爆や摂取することはそれこそ考えにくい。さらに、プーチン政権をこれから追及しようとしていた者が、自ら命を絶つというのもうなずけない。
また、脱毛について「短期間の内部摂取では考えにくい」とする日本の学者の意見もあるが、イギリスのポロニウム専門家は「脱毛は十分起きうる」としている。血液に取り込まれ、あらゆる臓器を内部からα線で破壊するという。あるいは、暗殺の確実性を上げるために、複数の毒薬が用いられた可能性もある。殺鼠剤にも使われる「タリウム」は、摂取後、5〜15日で脱毛することで知られている。
ところで、ロシア(旧ソ連)では、時の政権に反対する者たちに対する暗殺、ないし未遂事件がこれまでも多発している。
1959年のウクライナ民族主義運動指導者、ステパン・バンデラ氏暗殺事件。1978年の作家、ゲオルギー・マルコフ氏暗殺事件。この時は、毒を仕込んだ傘で刺されて死亡した。場所は今回と同じロンドン。
2003年7月には、独立系新聞の副編集長が原因不明の発疹で死亡。ダイオキシンが疑われている。2004年9月には、チェチェン問題を追及していた女性ジャーナリスト、アンナ・ポリトコフスカヤさんが、学校人質事件の起きた北オセチアに向かう機内で紅茶に毒を盛られ、意識不明の重体に陥った。その後回復するが、今年10月7日にモスクワ市内で射殺された。同じ2004年9月には、ウクライナ大統領選へ出馬しようとしていたビクトル・ユーシェンコ氏が夕食後に顔に発疹が起き、形がすっかり変わってしまった。体内からはダイオキシンが検出された。
ポロニウムとダイオキシン―――毒物を使ったケースが多いのが分かる。狙われる相手は、ウクライナやチェチェンなどの独立を訴えている運動家・政治家、言論弾圧を批判している作家・ジャーナリスト、政権の秘密を暴露しようとしている元幹部たちである。いずれも、時の政権にとって「都合の悪い」人たちだ。
今年7月、ロシア議会はプーチン大統領に対して、議会に報告することなくテロリストを殺害する権限を与えた。担っているのは「ロシア連邦保安局(FSB)」。元「国家保安委員会(KGB)」だ。政権中枢に近いところに「殺しのライセンス」を持ったプロ集団が存在していることになる。
反体制者を勝手に「テロリスト」と決めつけているのだとしたら・・・。「ポロニウム」だけにキユウ(杞憂)リーであってほしい。
キューリー夫人が祖国ポーランドにちなんでつけた「ポロニウム」。この放射性物質が、ポーランド上空を越えてロンドン―モスクワ間で運航されている「ブリティッシュ・エアウエイ」(英国航空)の機内から検出された。同時に、ロンドン市内の高級街にあるレストランやホテルなど12カ所からも検出されている。
「ポロニウム210」の多くはロシアの原子炉で製造されている。ウランなど天然物から抽出するのは危険性を考慮すると、ほとんど困難に近い。常識的にはまずモスクワからロンドンに運ばれたと考える方が妥当だろう。もちろん、別の国の航空機でロンドンに運ばれ、英国航空で持ち去られた可能性もある。
不可解な死を遂げたロシアの元スパイ、アレクサンドル・リトビネンコ氏。彼の尿からは、「ポロニウム210」が検出された。モスクワから運ばれたこの物質が、何らかの方法でリトビネンコ氏の体内に注入された可能性が高い。
ロシアのメディアは、「リトビネンコ氏の自作自演」説を流している。密売していて誤って摂取、プーチン政権に打撃を与えるために自ら服毒・・・などだ。
その根拠は、海外で「ポロニウム」を入手する可能性が全くゼロではない点だ。しかし、その毒性を知っている者が、誤って被爆や摂取することはそれこそ考えにくい。さらに、プーチン政権をこれから追及しようとしていた者が、自ら命を絶つというのもうなずけない。
また、脱毛について「短期間の内部摂取では考えにくい」とする日本の学者の意見もあるが、イギリスのポロニウム専門家は「脱毛は十分起きうる」としている。血液に取り込まれ、あらゆる臓器を内部からα線で破壊するという。あるいは、暗殺の確実性を上げるために、複数の毒薬が用いられた可能性もある。殺鼠剤にも使われる「タリウム」は、摂取後、5〜15日で脱毛することで知られている。
ところで、ロシア(旧ソ連)では、時の政権に反対する者たちに対する暗殺、ないし未遂事件がこれまでも多発している。
1959年のウクライナ民族主義運動指導者、ステパン・バンデラ氏暗殺事件。1978年の作家、ゲオルギー・マルコフ氏暗殺事件。この時は、毒を仕込んだ傘で刺されて死亡した。場所は今回と同じロンドン。
2003年7月には、独立系新聞の副編集長が原因不明の発疹で死亡。ダイオキシンが疑われている。2004年9月には、チェチェン問題を追及していた女性ジャーナリスト、アンナ・ポリトコフスカヤさんが、学校人質事件の起きた北オセチアに向かう機内で紅茶に毒を盛られ、意識不明の重体に陥った。その後回復するが、今年10月7日にモスクワ市内で射殺された。同じ2004年9月には、ウクライナ大統領選へ出馬しようとしていたビクトル・ユーシェンコ氏が夕食後に顔に発疹が起き、形がすっかり変わってしまった。体内からはダイオキシンが検出された。
ポロニウムとダイオキシン―――毒物を使ったケースが多いのが分かる。狙われる相手は、ウクライナやチェチェンなどの独立を訴えている運動家・政治家、言論弾圧を批判している作家・ジャーナリスト、政権の秘密を暴露しようとしている元幹部たちである。いずれも、時の政権にとって「都合の悪い」人たちだ。
今年7月、ロシア議会はプーチン大統領に対して、議会に報告することなくテロリストを殺害する権限を与えた。担っているのは「ロシア連邦保安局(FSB)」。元「国家保安委員会(KGB)」だ。政権中枢に近いところに「殺しのライセンス」を持ったプロ集団が存在していることになる。
反体制者を勝手に「テロリスト」と決めつけているのだとしたら・・・。「ポロニウム」だけにキユウ(杞憂)リーであってほしい。
