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森啓次郎エッセイ
森啓次郎エッセイ
11/10(金)
「それでも教育基本法を変えますか?」

 運命の11日がやってくる。手紙が本当だとすると、少なくとも3人の子どもの命が奪われる。2人は自殺で、1人は他殺で。他殺の1人は複数かもしれない。

 おそらく、東京都豊島区の学校では、厳戒態勢が取られているはずだ。土曜日なので、学校内は教師たちによる教室の巡回が頻繁に行われることになる。

 渋谷の消印のある東京、神奈川、千葉、埼玉県などでも、戦々恐々だろう。こちらは他殺も予告しているので、学校内だけでなく、地域全体が厳戒態勢に入るはずだ。

 手紙が例え本当ではなかったとしても、報道を見た子どもが「道連れ」自殺をおこなう可能性がある。豊島、渋谷の消印がない地域でも警戒が必要になる。

 厳戒態勢の中、11日は何とか乗り切ったとする。でも、その翌日に起こるかもしれない。あるいは、次の土曜日に起こるかもしれない。

 いじめが全国の小中高で起きている以上、結局はいくら警戒しても自殺を止めることは出来ない。

 ところで、手紙を送りつけられた文部科学省では、教育改革タウンミーティングでの「やらせ」が明らかになった。5回あったという。青森県八戸市では、PTA活動に関わっているらしき女性に「教育の原点は家庭教育だと思います」と意見を言わせた。

 現在、国会で審議されている教育基本法改定案では、第10条に「家庭教育」が加わり「父母その他の保護者は、子の教育について第一義的責任を有するものであって、生活のために必要な習慣を身に付けさせるとともに、自立心を育成し、心身の調和のとれた発達を図るよう努めるものとする」と規定されている。

 現行法にはこの部分は全くない。教育基本法は、国家と教育のあり方を定めたものであって、家庭教育にまで首を突っ込むのは「内政干渉」「領空侵犯」だ。

 お節介なことに、さらに13条には「学校、家庭及び地域住民その他の関係者は、(中略)相互の連携及び協力に努めるものとする」と書かれている。「その他の関係者」には、警察や町内会などが考えられる。地域活動に協力しない人間は、排除される危険性がある。「我が国と郷土を愛する」ために、祝日の国旗掲揚が強制されるようになるかもしれない。「提灯行列」がしょっちゅう行われるかもしれない。すべて一丸となった国家教育への邁進である。

 何度も書くが、現行の教育基本法は、軍国主義教育の誤りを二度と繰り返さないためにつくられた。その主要なテーマは「国家による教育の干渉を防ぐ」ことにあった。そのために「教育の主体は国民である」と高らかに掲げられている。

だから、この「やらせ」質問は、教育基本法改定の核心を突く重要な意味を持っていた。単に「質問が出ないと盛り上がらないから」などと言った軽い意図でおこなわれたわけでは決してない。

「やらせ」によって世論誘導がおこなわれた以上、教育基本法改定問題はいったん白紙に戻すべきだ。憲法に準ずる重要法案がこんな形で制定されたら、国会議員も文部科学省も、タウンミーティングに関わった内閣府も各地の教育委員会も、その他関係者も恥ずかしいのではないですか?
レギュラー出演者
森 啓次郎
森 啓次郎
「Asahiパソコン」「ぱそ」「週刊朝日」編集長を経て、現在、大学講師(メディア論)。