朝日グループのニュースチャンネル
文字サイズ 大 標準
朝日ニュースターとは視聴方法よくある質問サイトマップHOME
週間番組表月間番組表番組一覧プレゼントご意見・ご感想メールマガジン
視点
放送内容
森啓次郎エッセイ
森啓次郎エッセイ
10/13(金)
「硝石・石油・核爆弾」

 安部龍太郎さんの最新作『天下布武』(てんかふぶ)を読んでいる。上巻を読み終わり、下巻に入った。時は戦国時代、信長の小姓をつとめた3人の若者たちの目を通して、天正6年(1578年)から天正10年(1582年)までの5年間にスポットを当てている。

 この時代、ヨーロッパは大航海時代に入っていた。ポルトガルはキリスト教の布教を前面に押し立てて、イエズス会と組んで南米、アジアへの領地拡大を目指していた。

 信長がキリスト教の布教を許し、イエズス会を保護した背景には、硝石の輸入独占がある。火薬の原料となる硝石は、日本では産出されない。中国や東南アジアからの輸入に頼っていた。それを運んでいたのが、ポルトガルの商船だった。戦国時代を勝ち抜くためには、新式の鉄砲と硝石がどうしても必要だった。

 ポルトガルは、マカオを拠点に東アジア貿易(侵略)を狙っていた。イスパニア(スペイン)も、フィリピンのマニラを拠点に中国(明国)への出兵を考えていた。

 1580年(天正8年)、イスパニアはポルトガルを併合する。ポルトガルに代わって日本での権益を目論むイスパニアは、信長と対立する毛利勢と結託を謀り、信長を倒そうとした。

 ヨーロッパの事情が、日本の歴史に直接的に影響を与えるようになったといえる。足利義昭、朝廷、イエズス会、イスパニア、そして戦国大名たちの複雑な思惑の中で、本能寺の変は起きる。信長の後に天下を取った秀吉が、明国に出兵したのは偶然ではない。背後にイスパニアの意図が隠されている。

 現代日本では、「硝石」は石油にあたる。最も重要なエネルギー源を100%外国からの輸入に頼らなくてはならないからだ。そして、その90%を中東に頼っている。日本にとって中東の石油は生命線であるはずなのに、イランの石油権益をアメリカの圧力によって手放さざるをえなくなった。イランの核開発に対するアメリカの制裁に同調させられたのだ。

 そのイランにとっての「硝石」は核爆弾である。北朝鮮が開発した核技術は、やがてイランに渡るだろう。

 北朝鮮、中国、インド、パキスタンと続いて、もし、イランが核爆弾を持つことになれば、アフガニスタン、イラクを挟んで、イスラエルまでの核ベルトが出来上がる。イスラエルが核武装しているのは公然の秘密だからだ。

 世界は核軍縮どころか、核拡散に向かって進んでいる。本当に問われているのは、すでに核保有している米英仏ロ中、常任理事国5カ国の姿勢ではないのか。
レギュラー出演者
森 啓次郎
森 啓次郎
「Asahiパソコン」「ぱそ」「週刊朝日」編集長を経て、現在、大学講師(メディア論)。