
4人目の辞任はない
原爆投下を「しょうがない」と発言した責任をとって、久間章生防衛相が今月初めに辞任した。どう考えても、長崎市を選挙区とする議員とは思えない発言だった。
安倍政権発足から9カ月で交代した閣僚は、佐田玄一郎行革担当相、自殺した松岡利勝農水相に次いで、3人目。そういえば、首相任命の本間正明政府税調会長の辞任というのもあった。
「いやいや、『女性は産む機械』という失言をした柳沢伯夫厚生労働相こそ、辞任に値しますよ」
こう語るのは、鈴木宗男衆院議員だ。
「私は、松岡さんが自殺する4日前に会いました。そのとき松岡さんはこう言いましたよ。『柳沢はオレの疑惑のおかげで辞めずに助かったんだ』と……。あれは、本当ならば辞任しても不思議でないほどの失言ですよ」
鈴木氏の言葉を待つまでもなく、閣僚だけでも4人の進退が問われたことになる。歴代内閣と比較しても、その数は少なくない。
もはや、「任命責任」といったレベルの問題ではないのではないか。ここまでくると、安倍首相自身の政治力、および統治能力自体に疑いを持たざるを得ない。自らの内閣すら管理できない首相に、果たして、国家を担うことができるのだろうか。
リクルート事件に関連して、88年12月、当時の宮沢喜一蔵相、長谷川峻法相が辞任し、翌年1月には原田憲経済企画庁長官も辞めた。結局4月になって、竹下首相は責任をとり退陣を表明した。
94年に発足した村山内閣では、閣僚による失言が相次いだ。桜井新環境庁長官が「日本は侵略戦争をしたのではない。アジアは日本のおかげで植民地支配から独立した」と発言すれば、江藤隆美総務庁長官は「植民地時代に日本は悪いこともしたが良いこともした。日韓併合が強制的だという村山首相の考えは間違っている」と発言し、それぞれ辞任を余儀なくされた。
またその間には、野党・新進党と国会質問を裏取引したとして田沢智治法相が辞めている。こうして3閣僚が辞任した村山内閣も96年1月、総辞職した。
森内閣でも3閣僚が辞めている。銀行などからの利益提供問題で久世公堯金融再生委員長が、女性スキャンダルで中川秀直官房長官が、そして、KSDからの資金提供問題で額賀福志郎経済財政担当相が、それぞれ引責辞任した。直後に森首相自身が、ハワイ沖で起こった練習船「えひめ丸」事故の際の危機管理能力を問われて内閣総辞職している。
このように過去、自らの内閣で3閣僚を辞めさせた首相は、例外なく退陣している。それはもはや「任命責任」にとどまらず、政治力、統治能力、危機管理能力の欠如――と受けとられるからだろう。
「4人目の閣僚辞任」というものはない。政治の歴史が雄弁に物語っている。
(朝日新聞be、2007年7月14日掲載)
安倍政権発足から9カ月で交代した閣僚は、佐田玄一郎行革担当相、自殺した松岡利勝農水相に次いで、3人目。そういえば、首相任命の本間正明政府税調会長の辞任というのもあった。
「いやいや、『女性は産む機械』という失言をした柳沢伯夫厚生労働相こそ、辞任に値しますよ」
こう語るのは、鈴木宗男衆院議員だ。
「私は、松岡さんが自殺する4日前に会いました。そのとき松岡さんはこう言いましたよ。『柳沢はオレの疑惑のおかげで辞めずに助かったんだ』と……。あれは、本当ならば辞任しても不思議でないほどの失言ですよ」
鈴木氏の言葉を待つまでもなく、閣僚だけでも4人の進退が問われたことになる。歴代内閣と比較しても、その数は少なくない。
もはや、「任命責任」といったレベルの問題ではないのではないか。ここまでくると、安倍首相自身の政治力、および統治能力自体に疑いを持たざるを得ない。自らの内閣すら管理できない首相に、果たして、国家を担うことができるのだろうか。
リクルート事件に関連して、88年12月、当時の宮沢喜一蔵相、長谷川峻法相が辞任し、翌年1月には原田憲経済企画庁長官も辞めた。結局4月になって、竹下首相は責任をとり退陣を表明した。
94年に発足した村山内閣では、閣僚による失言が相次いだ。桜井新環境庁長官が「日本は侵略戦争をしたのではない。アジアは日本のおかげで植民地支配から独立した」と発言すれば、江藤隆美総務庁長官は「植民地時代に日本は悪いこともしたが良いこともした。日韓併合が強制的だという村山首相の考えは間違っている」と発言し、それぞれ辞任を余儀なくされた。
またその間には、野党・新進党と国会質問を裏取引したとして田沢智治法相が辞めている。こうして3閣僚が辞任した村山内閣も96年1月、総辞職した。
森内閣でも3閣僚が辞めている。銀行などからの利益提供問題で久世公堯金融再生委員長が、女性スキャンダルで中川秀直官房長官が、そして、KSDからの資金提供問題で額賀福志郎経済財政担当相が、それぞれ引責辞任した。直後に森首相自身が、ハワイ沖で起こった練習船「えひめ丸」事故の際の危機管理能力を問われて内閣総辞職している。
このように過去、自らの内閣で3閣僚を辞めさせた首相は、例外なく退陣している。それはもはや「任命責任」にとどまらず、政治力、統治能力、危機管理能力の欠如――と受けとられるからだろう。
「4人目の閣僚辞任」というものはない。政治の歴史が雄弁に物語っている。
(朝日新聞be、2007年7月14日掲載)

