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教育改革をあせるな
 1月、安倍首相は自身初の施政方針演説で、教育改革を今国会の最重要課題とし、「教育国会」とすることを宣言した。

実際に3月には、文部科学相の諮問機関の中央教育審議会の答申を受けた教育関連3法案が提出され、現在は国会で審議されている最中だ。

 同時に、首相の私的懇談会である「教育再生会議」も、第2次報告に向けて会議を重ねている。

 時の首相が、教育論議のために、直属の審議会を設置するのは、戦後に限れば今回で3回目のことだ。

 84年、中曽根康弘首相が設置した「臨時教育審議会(臨教審)」は、4回の答申を出すまでに会期だけでまる3年、それを受けての法制化にこぎつけるまでに、さらに数年を費やしている。

 また、小渕・森政権の「教育改革国民会議」は、話し合いの期間こそ約1年間だが、26人の委員によって地方視察もおこなわれ、公聴会も数回開かれた。その上で提出された報告については、それ以降5年以上にわたり中教審で検討されてきた。結局、提案のひとつである教育基本法改正(昨年秋に成立)が実現するまでには、約6年の歳月を費やしている。

 かように教育論議は膨大な時間と労力を必要としてきた。なぜならば、性急な文教政策の変更は、教育現場の混乱を招くと考えられてきたからだ。

 ところが先月、通常1年ほどかかる中教審の審議がわずか1カ月で両論併記のまま答申されたように、今の教育論議は、安倍官邸がねじを巻いて過去に例のないペースで進んでいる。

 同様に「教育再生会議」も昨年11月の初会合以来、わずか3カ月での第1次報告を提出、そして来月には第2次報告を出そうかという勢いのハイペースで進められている。

 いったいなぜ、安倍首相は教育改革を急ぐのか?

 「すべては参院選のためだ。官邸は目に見える手柄がほしいだけだ」(元文相)

 教育が、政権浮揚策のために使われようとしているのならば「悲劇」である。

 「本来教育再生会議のメンバーでない下村博文官房副長官までが出席して、山谷えり子補佐官を叱咤(しった)しつつ、議事進行でハッパをかけている。簡単なものを先に議論させ、紛糾しそうな案件は、後回しにしている」(メンバーの一人)

 3月末、再生会議は唐突に、「道徳」を正式教科にする案を発表した。

 昨年来、筆者は教育再生会議を取材している。だが議事録を読み返してみても、「道徳」をメーンテーマとして扱う議論など、なかったはずだ。

 安倍首相がその著書『美しい国へ』でうたった「9月入学」や「教育バウチャー制」は、意見が分かれるとして、参院選後に見送られている。本当にいま必要な議論は、何だろうか。

 教育が「政争の具」に使われ、国の未来を担う子供たちが政治に巻き込まれることだけは避けるべきだ。
 (朝日新聞be、2007年4月7日掲載)
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