
No.31 村の掟、崩れる
日本社会のそこここに、村の掟がはびこっている。国家の法も会社の内部統制も及ばぬ、閉ざされた仲間たちの強い紐帯。談合組織は、その象徴である。摘発には常に、密室性が壁となった。
二〇〇六年一月、改正独占禁止法の目玉である課徴金減免制度が施行された。談合やカルテルに加担した企業が自ら名乗り出れば、最初の申請者は、刑事告発と数億円の課徴金全額が免除、二番目は五〇%、三番目は三〇%が減額される――日本に馴染まないとされた「司法取引」の一種だ(注1)。経済界は、「村の掟が最優先される日本で、仲間を裏切る制度など機能しない」(経団連幹部)、と高をくくっていた。ところが、施行と同時に、三菱重工業が“自首”した。国土交通省発注の水門工事、首都高速道路公団発注のトンネル換気設備工事の談合の二件。業界最大手の“裏切り”に業界は大混乱をきたし、即座に他の大企業も追随した。
施行から一年半を経過した現在、一〇〇件超という予想外の申請ラッシュが起きている。その一社である大手メーカー首脳は、「第一に、沈黙を守り、他社に出し抜かれたときの痛手はあまりに大きい。第二に、欧米での事業を通じて法令違反の恐ろしさが身に染みつつある。第三に、公共事業は激減、入札は叩きあい。談合の旨みは減った。守るべき権益などもうない」と吐露する。グローバル化とカネの切れ目動揺する業界に向かって公正取引委員会が放った司法取引という矢は、日本的風土を打ち抜いた。前述の経団連幹部は、「完全に読み誤った。公取委に完敗だ」と話す。
申請者は、洗いざらいを話す。発注者側の関与実態も赤裸々になる。いつ仲間が裏切るかわからないと疑心暗鬼が募れば、談合そのものが成り立たない。革命的変化が起きつつある(辻広雅文、『週刊ダイヤモンド』掲載)。
(注1)この制度のもとになったのは、欧米で導入されている「リーニエンシープログラム」である。
二〇〇六年一月、改正独占禁止法の目玉である課徴金減免制度が施行された。談合やカルテルに加担した企業が自ら名乗り出れば、最初の申請者は、刑事告発と数億円の課徴金全額が免除、二番目は五〇%、三番目は三〇%が減額される――日本に馴染まないとされた「司法取引」の一種だ(注1)。経済界は、「村の掟が最優先される日本で、仲間を裏切る制度など機能しない」(経団連幹部)、と高をくくっていた。ところが、施行と同時に、三菱重工業が“自首”した。国土交通省発注の水門工事、首都高速道路公団発注のトンネル換気設備工事の談合の二件。業界最大手の“裏切り”に業界は大混乱をきたし、即座に他の大企業も追随した。
施行から一年半を経過した現在、一〇〇件超という予想外の申請ラッシュが起きている。その一社である大手メーカー首脳は、「第一に、沈黙を守り、他社に出し抜かれたときの痛手はあまりに大きい。第二に、欧米での事業を通じて法令違反の恐ろしさが身に染みつつある。第三に、公共事業は激減、入札は叩きあい。談合の旨みは減った。守るべき権益などもうない」と吐露する。グローバル化とカネの切れ目動揺する業界に向かって公正取引委員会が放った司法取引という矢は、日本的風土を打ち抜いた。前述の経団連幹部は、「完全に読み誤った。公取委に完敗だ」と話す。
申請者は、洗いざらいを話す。発注者側の関与実態も赤裸々になる。いつ仲間が裏切るかわからないと疑心暗鬼が募れば、談合そのものが成り立たない。革命的変化が起きつつある(辻広雅文、『週刊ダイヤモンド』掲載)。
(注1)この制度のもとになったのは、欧米で導入されている「リーニエンシープログラム」である。

