
No.29 野球選手とCIO
甲子園の熱戦を見て、日本の野球選手育成プログラムは完璧だと思う。全国にリトルリーグ、小中高校に野球部があり、プロ野球まで多様な、階層化された進路が用意され、大リーグへも道は開かれている。広い裾野から野球に熱意のある者、才能豊かな者を発掘、動機付けし、鍛錬し、評価、選抜するシステムが完備されている。
IT超先進国の米国にして、民間より政府のITガバナンス能力は落ちるらしい。一九九〇年代前半、年間七兆円を投資する政府のITプロジェクトに失敗が多発した。その原因はつまるところ、発注者側の設計、発注、工程管理能力の不足、つまりITガバナンスの欠如だと結論付けた米政府は九六年、特別立法を制定、CIO(最高情報責任者)育成に乗り出した。専門家を結集し、一二分類七二の中核項目、それらを細分化した五四九の学習項目を用意、有名大学に「CIO大学」の開設を呼びかけた。選ばれたカーネギー・メロンなど六大学からすでに七七〇人が巣立った。
日本の電子政府構想が迷走している。原因はひとえに、人材不足にある。人事院が主管する府省共通業務システムの第一弾である「人事給与等システム」は、はなから使い物にならないと言われている。投じた税金二〇〇〇億円は無駄カネになる。民間一社への丸投げ批判を受け、社会保険庁の新年金システムなどでは、効率化、透明化確保のため、複数社への分割発注が進む。だが、分割発注は丸投げよりはるかに発注者側に高度な能力が必要だ。人事院にも社保庁にもそんな優秀な人材がいるはずがない。各省庁は民間からCIOの採用を急いだが、機能していない。そもそも、日本は民間にもCIO足りうる人材はごく薄い。
それでも、誰も、長期的視野に立った人材育成システム作りを言い出さない。
“野球止まり”の国、なのか(辻広雅文、『週刊ダイヤモンド』掲載)
IT超先進国の米国にして、民間より政府のITガバナンス能力は落ちるらしい。一九九〇年代前半、年間七兆円を投資する政府のITプロジェクトに失敗が多発した。その原因はつまるところ、発注者側の設計、発注、工程管理能力の不足、つまりITガバナンスの欠如だと結論付けた米政府は九六年、特別立法を制定、CIO(最高情報責任者)育成に乗り出した。専門家を結集し、一二分類七二の中核項目、それらを細分化した五四九の学習項目を用意、有名大学に「CIO大学」の開設を呼びかけた。選ばれたカーネギー・メロンなど六大学からすでに七七〇人が巣立った。
日本の電子政府構想が迷走している。原因はひとえに、人材不足にある。人事院が主管する府省共通業務システムの第一弾である「人事給与等システム」は、はなから使い物にならないと言われている。投じた税金二〇〇〇億円は無駄カネになる。民間一社への丸投げ批判を受け、社会保険庁の新年金システムなどでは、効率化、透明化確保のため、複数社への分割発注が進む。だが、分割発注は丸投げよりはるかに発注者側に高度な能力が必要だ。人事院にも社保庁にもそんな優秀な人材がいるはずがない。各省庁は民間からCIOの採用を急いだが、機能していない。そもそも、日本は民間にもCIO足りうる人材はごく薄い。
それでも、誰も、長期的視野に立った人材育成システム作りを言い出さない。
“野球止まり”の国、なのか(辻広雅文、『週刊ダイヤモンド』掲載)

