
No.27 金融の学力格差
モルガン・スタンレー証券のロバート・フェルドマン氏は日本の金融市場強化策の一環として、「金融報道の質が低すぎる。金融記者には修士号程度の資格取得を義務付けるべきだ」と提言する。何の学位もない金融記者だった私は、反発と反省の念が膨らむ。
毎年一二月、世界的会計事務所のプライス・ウオーターハウスがジュネーブで国際金融会議を主催する。昨年のテーマは、「バーゼル2」。市場の変動に備えた金融機関の新しい自己資本規制を、監督官庁がいかに監視、監督するか、各国の規制当局、金融機関幹部が激論を交わした。だが、パネルデイスカッションで導入事例を問われた金融庁の若手課長補佐は、まともに答えられず、場内の失笑を買った。彼の能力不足だけの問題ではない。昨今の金融に関する国際的な会議では、「日本の出席メンバーが、議論のレベルの高さについていけない場面が少なくない」(出席者)のだ。
この一〇数年、日本が不良債権処理に時間を費やす間に、世界は遠のいた。キャッチアップ策を模索する当事者の間で、「学力とモチベーションの格差」が自嘲気味にささやかれる。各国の規制当局、中央銀行の幹部は、日本に比べて圧倒的にPhD取得者が多い。理論研究や制度の実証研究で鍛え抜かれたスペシャリストたちが国際金融市場の最先端に陣取り、国益と自らの栄達をかけ、能力を競い合っている。
高等教育は企業の人事システムと一体である。日本の産業界は、学位取得者よりもオン・ザ・ジョブの実践教育を要求した。スペシャリスト育成よりも、ゼネラリスト育成を優先した。役所もメデイアも同じだ。その戦略は見事に奏功し、製造業中心の経済立国を果した。それが今、知識集約型産業への転換に大きな枷となる。成功体験の重しである(辻広雅文、『週刊ダイヤモンド』掲載)。
毎年一二月、世界的会計事務所のプライス・ウオーターハウスがジュネーブで国際金融会議を主催する。昨年のテーマは、「バーゼル2」。市場の変動に備えた金融機関の新しい自己資本規制を、監督官庁がいかに監視、監督するか、各国の規制当局、金融機関幹部が激論を交わした。だが、パネルデイスカッションで導入事例を問われた金融庁の若手課長補佐は、まともに答えられず、場内の失笑を買った。彼の能力不足だけの問題ではない。昨今の金融に関する国際的な会議では、「日本の出席メンバーが、議論のレベルの高さについていけない場面が少なくない」(出席者)のだ。
この一〇数年、日本が不良債権処理に時間を費やす間に、世界は遠のいた。キャッチアップ策を模索する当事者の間で、「学力とモチベーションの格差」が自嘲気味にささやかれる。各国の規制当局、中央銀行の幹部は、日本に比べて圧倒的にPhD取得者が多い。理論研究や制度の実証研究で鍛え抜かれたスペシャリストたちが国際金融市場の最先端に陣取り、国益と自らの栄達をかけ、能力を競い合っている。
高等教育は企業の人事システムと一体である。日本の産業界は、学位取得者よりもオン・ザ・ジョブの実践教育を要求した。スペシャリスト育成よりも、ゼネラリスト育成を優先した。役所もメデイアも同じだ。その戦略は見事に奏功し、製造業中心の経済立国を果した。それが今、知識集約型産業への転換に大きな枷となる。成功体験の重しである(辻広雅文、『週刊ダイヤモンド』掲載)。

