
No.16 IT革命の陰鬱
コンビニに行く度に、ここは二極化社会の象徴だと思い知らされる。店員の仕事は、差し出された商品をPOSでスキャンすることと棚の陳列ぐらいで、三日もすれば“熟練”してしまう。何十万アイテムの販売データがリアルタイムで流れ込む本部には、頭脳部隊が陣取る。データを解析し、商品政策、組織運営戦略を決め、執行する。かって、店頭と本部の間にあった、知恵と工夫に支えられた受発注その他の膨大な業務はすべてITシステムが代替した。
あるいは、大企業の人事部。独特のスキルの塊で、決して定型化できないと思われていた業務がマニュアル化され、海外にアウトソーシングされ始めている。
第三次産業革命たるIT革命の本質は、中抜きである。池尾和人・慶応大学教授は、「一〇年、一五年費やして技能を高め、それによって給与も上がり、キャリアと認められる業務、職種が急速に減っている」という。あらゆる企業、産業で、中間層の仕事が消滅しつつあり、象徴的に言えば、データを入力するだけの単純労働者とそれを分析する高度専門知識を身に着けた頭脳労働者、低額所得者と高額所得者に二極化する。中間層は前者の仕事に回らざるを得ない。最大の問題は、単純労働に就いた人々は技能を磨きようもなく、賃金も上がらず、格差が固定してしまうことにある。
IT革命は酷薄さの片鱗を見せはじめたばかりだ。その認識を欠く「労働国会」「格差是正国会」での議論は、私には虚しく響く。10年先に、互いに侮蔑、反発しながら、少数のテクノクラート的エリートが大衆を管理、維持する陰鬱な社会が見える。(辻広雅文、『週刊ダイヤモンド』掲載)
あるいは、大企業の人事部。独特のスキルの塊で、決して定型化できないと思われていた業務がマニュアル化され、海外にアウトソーシングされ始めている。
第三次産業革命たるIT革命の本質は、中抜きである。池尾和人・慶応大学教授は、「一〇年、一五年費やして技能を高め、それによって給与も上がり、キャリアと認められる業務、職種が急速に減っている」という。あらゆる企業、産業で、中間層の仕事が消滅しつつあり、象徴的に言えば、データを入力するだけの単純労働者とそれを分析する高度専門知識を身に着けた頭脳労働者、低額所得者と高額所得者に二極化する。中間層は前者の仕事に回らざるを得ない。最大の問題は、単純労働に就いた人々は技能を磨きようもなく、賃金も上がらず、格差が固定してしまうことにある。
IT革命は酷薄さの片鱗を見せはじめたばかりだ。その認識を欠く「労働国会」「格差是正国会」での議論は、私には虚しく響く。10年先に、互いに侮蔑、反発しながら、少数のテクノクラート的エリートが大衆を管理、維持する陰鬱な社会が見える。(辻広雅文、『週刊ダイヤモンド』掲載)

