
No.14 ブードウ・アベノミクス
アフリカの精霊信仰、ブードウー教の名を冠してブードウー・エコノミクス、呪術的経済政策と揶揄されたのは、一九八〇年代のレーガノミクスであった。大幅減税を核に歳出削減、規制緩和などで高い経済成長を企図したパッケージ政策は楽観、バラ色に過ぎた。
当初から、企業減税が投資拡大と生産性向上につながる根拠、論理などない、呪術頼みに過ぎぬと呆れられていたのである。結局、再生どころか財政赤字と貿易赤字が急拡大し、米国経済を窮地に追いやった。このレーガノミクスを今、安倍政権は成長政策のモデルにし、経団連も高く評価し、法人税減税を梃子に拡大均衡経済を目指す。
減税に加え超低金利の維持で、高成長と財政再建の両立を図ろうとする現政府に影響力を残す竹中平蔵慶大教授はかって経済財政諮問会議で、高名な経済学者のマンキュー・ハーバード大学教授の論文を持ち出して、こうぶった。「米国の過去一二一年間は、平均的には経済成長率が金利を上回っている。当然、日本でも可能だ」。確かに論文にはその事実に加え、「財政赤字であっても、基礎的収支が黒字化し、経済成長率が長期金利を上回っていれば永遠に借換可能」とある。だが、論文の結論は違うのだ。「財政赤字の放置はねずみ講に似たギャンブルであり、失敗した場合の被害を考えれば手を出すのは楽観的過ぎる」。
歴史の誤認や論文のいいとこ取りで国民に幻想を振りまくインチキは、不勉強なのか、願望からしか現実を見ないからなのか。知性と誠実を欠く政権で、ブードウー・アベノミクスが始まる(辻広雅文、『週刊ダイヤモンド』掲載)
(注)竹中氏が持ち出したマンキュー教授の論文は1995年に書かれ、論文名は「財政赤字の賭け(The Deficit Gamble)」という。
マンキュー教授は、1980年代のレーガン大統領の財政赤字政策を揶揄してこの論文を締めくくっている。
「(本稿における)財政赤字に対する見解によれば、なぜレーガン大統領が1980年代に放漫財政を選んだかも説明できる。伝記作家は、レーガン大統領の底なしの楽観をしばしば指摘する。その楽観はB級映画俳優から米国大統領に成り上がったという稀有な経験によるものもある。おそらくレーガン大統領の楽観が、将来の経済成長についての過剰な自信を生み、財政赤字水準の増加について余り気にしないことになったのであろう。この仮説は1982年〜1984年に大統領経済諮問委員会の委員長であったマーテイン=フェルドシュタインによる動議とも整合的である。フェルドシュタインはレーガン大統領に財政赤字の危険を報告したが、大統領は高い成長率により助かることを望み続けた。簡単に言うと、レーガン大統領のような永遠の楽観主義者が、現実主義者から見ると愚かしいと思うようなねずみ講のギャンブルに手を出すのかもしれない」
付け加えれば、この論文では、債務残高がGDP比(ネット)で100〜150%になった場合は、ねずみ講の失敗である、としている。
日本の国・地方の長期債務残高はすでに、2006年度末で150.8%に達している。
当初から、企業減税が投資拡大と生産性向上につながる根拠、論理などない、呪術頼みに過ぎぬと呆れられていたのである。結局、再生どころか財政赤字と貿易赤字が急拡大し、米国経済を窮地に追いやった。このレーガノミクスを今、安倍政権は成長政策のモデルにし、経団連も高く評価し、法人税減税を梃子に拡大均衡経済を目指す。
減税に加え超低金利の維持で、高成長と財政再建の両立を図ろうとする現政府に影響力を残す竹中平蔵慶大教授はかって経済財政諮問会議で、高名な経済学者のマンキュー・ハーバード大学教授の論文を持ち出して、こうぶった。「米国の過去一二一年間は、平均的には経済成長率が金利を上回っている。当然、日本でも可能だ」。確かに論文にはその事実に加え、「財政赤字であっても、基礎的収支が黒字化し、経済成長率が長期金利を上回っていれば永遠に借換可能」とある。だが、論文の結論は違うのだ。「財政赤字の放置はねずみ講に似たギャンブルであり、失敗した場合の被害を考えれば手を出すのは楽観的過ぎる」。
歴史の誤認や論文のいいとこ取りで国民に幻想を振りまくインチキは、不勉強なのか、願望からしか現実を見ないからなのか。知性と誠実を欠く政権で、ブードウー・アベノミクスが始まる(辻広雅文、『週刊ダイヤモンド』掲載)
(注)竹中氏が持ち出したマンキュー教授の論文は1995年に書かれ、論文名は「財政赤字の賭け(The Deficit Gamble)」という。
マンキュー教授は、1980年代のレーガン大統領の財政赤字政策を揶揄してこの論文を締めくくっている。
「(本稿における)財政赤字に対する見解によれば、なぜレーガン大統領が1980年代に放漫財政を選んだかも説明できる。伝記作家は、レーガン大統領の底なしの楽観をしばしば指摘する。その楽観はB級映画俳優から米国大統領に成り上がったという稀有な経験によるものもある。おそらくレーガン大統領の楽観が、将来の経済成長についての過剰な自信を生み、財政赤字水準の増加について余り気にしないことになったのであろう。この仮説は1982年〜1984年に大統領経済諮問委員会の委員長であったマーテイン=フェルドシュタインによる動議とも整合的である。フェルドシュタインはレーガン大統領に財政赤字の危険を報告したが、大統領は高い成長率により助かることを望み続けた。簡単に言うと、レーガン大統領のような永遠の楽観主義者が、現実主義者から見ると愚かしいと思うようなねずみ講のギャンブルに手を出すのかもしれない」
付け加えれば、この論文では、債務残高がGDP比(ネット)で100〜150%になった場合は、ねずみ講の失敗である、としている。
日本の国・地方の長期債務残高はすでに、2006年度末で150.8%に達している。

