
No.13 経営者が試される
あなたは三四歳、大手製造業の経営企画部に所属している。管理職手前の主任、年収が七〇〇万円。ある日、来年度から残業代はなし、と上司から通告される。君の業務は労働時間で測定できる性質のものではない、成果がすべてだからだ。その代わり、時間拘束はしない。自由裁量で効率を大いに高めてくれ。能力の低いものが、だらだらと残業代を稼ぐのは不公平だろう?究極の成果主義へ移行して、会社の生産性を上げるのだ――。
一定年収以上の会社員を労働時間規制の対象から外すホワイトカラーエグゼンプションが法制化される(エグゼンプションは除外の意)。経団連は、企業の生産性を高めるためだと強く後押しする。一九九〇年代後半から、経営環境の激変に対応するため、企業は雇用の非正規化を進めた。そこに過剰な圧力がかかり、ワーキングプアが社会問題化し、正規社員なみ待遇への改善要求が高まった。となれば、正規社員の既得権、労働待遇に手をつけざるを得ない。その突破口が「時間から成果へ」なのだろう。加えて、時間規制を外すことで、労働当局の介入余地を極力減らしたいとの本音も募るのだろう。
だが、個々人の自覚を促し、残業代を切るだけでは、企業の生産性は上がるどころか、モラールが下がるのは自明だ。成果主義はすでに、日本のそこかしこで軋んでいる。新制度の補完に、ホワイトカラー個々人の能力、業務の“価格付け”を新たに行い、責任と権限を規定し直す賃金・人事制度の再構築と、労働当局に代わる自己規律が必須となる。そんな厄介な改革を引き受ける覚悟が、経営者にできているのだろうか。新制度で試されているのは、経営者である。(『週刊ダイヤモンド』より転載)
一定年収以上の会社員を労働時間規制の対象から外すホワイトカラーエグゼンプションが法制化される(エグゼンプションは除外の意)。経団連は、企業の生産性を高めるためだと強く後押しする。一九九〇年代後半から、経営環境の激変に対応するため、企業は雇用の非正規化を進めた。そこに過剰な圧力がかかり、ワーキングプアが社会問題化し、正規社員なみ待遇への改善要求が高まった。となれば、正規社員の既得権、労働待遇に手をつけざるを得ない。その突破口が「時間から成果へ」なのだろう。加えて、時間規制を外すことで、労働当局の介入余地を極力減らしたいとの本音も募るのだろう。
だが、個々人の自覚を促し、残業代を切るだけでは、企業の生産性は上がるどころか、モラールが下がるのは自明だ。成果主義はすでに、日本のそこかしこで軋んでいる。新制度の補完に、ホワイトカラー個々人の能力、業務の“価格付け”を新たに行い、責任と権限を規定し直す賃金・人事制度の再構築と、労働当局に代わる自己規律が必須となる。そんな厄介な改革を引き受ける覚悟が、経営者にできているのだろうか。新制度で試されているのは、経営者である。(『週刊ダイヤモンド』より転載)

