
No.9 政府発イノベーションの幻想
ため息が出る。古川一夫・日立製作所社長は、「コングロマリット・プレミアムを目指す」と言い続ける。多数の赤字部門を抱えながら、選択と集中を回避する。加重時価総額平均(時価総額÷売上高)が世界のテクノロジー企業のなかで五〇位(七月時点)という低迷も省みずに。
安倍新政権は「新成長経済」を掲げ、その核はイノベーションを据えた。確かに、今後は経済成長の二大要素、労働人口増加も資本蓄積も望めない。ならば、イノベーションのよって生産性を向上させるしかない。ところで、イノベーションは二種類ある。技術革新と社会制度変革による資源の最適配分である。
では、政府に何ができるか。例えば、生産性の低い農業や流通産業に大胆な競争政策を導入、再編淘汰を進め、労働、資本を生産性の高い産業に移転することこそ有効なのだが、政治的に到底できまい。問題は、産業間、地域間だけではない。日立に限らず、社内の強い抵抗にあって赤字部門の撤退ができず、企業内の資源最適配分が進まぬ企業は少なくない。日本の生産性向上を阻むネックは、担い手の民、突き詰めれば「経営者の質」にある。そこには、政府は手が出せない。政府が着目する労働市場の流動化は重要課題だが、問題の本質は大企業が人材を抱え込んでいることにある。法人税の減税にしても、投資行動には中立、が経済学の基礎である。生産性向上に結びつくのか、怪しい。
経営者の行動を規定するのは、投資家である。投資家が求める利益率(資本コスト)と達成できぬ経営者は、本来退場すべきなのだ。とすれば、目の肥えた、質の高い投資家が集まる資本市場育成が必要であり、政府には不公正取引を許さぬ諸制度の整備、監視機能の充実といった地味な作業こそ求められているのである。
イノベーションを提唱した経済学者のシュンペーターは、「経済の駆動力は、企業家の創造的破壊にある」と言った(辻広雅文、『週刊ダイヤモンド』掲載)
安倍新政権は「新成長経済」を掲げ、その核はイノベーションを据えた。確かに、今後は経済成長の二大要素、労働人口増加も資本蓄積も望めない。ならば、イノベーションのよって生産性を向上させるしかない。ところで、イノベーションは二種類ある。技術革新と社会制度変革による資源の最適配分である。
では、政府に何ができるか。例えば、生産性の低い農業や流通産業に大胆な競争政策を導入、再編淘汰を進め、労働、資本を生産性の高い産業に移転することこそ有効なのだが、政治的に到底できまい。問題は、産業間、地域間だけではない。日立に限らず、社内の強い抵抗にあって赤字部門の撤退ができず、企業内の資源最適配分が進まぬ企業は少なくない。日本の生産性向上を阻むネックは、担い手の民、突き詰めれば「経営者の質」にある。そこには、政府は手が出せない。政府が着目する労働市場の流動化は重要課題だが、問題の本質は大企業が人材を抱え込んでいることにある。法人税の減税にしても、投資行動には中立、が経済学の基礎である。生産性向上に結びつくのか、怪しい。
経営者の行動を規定するのは、投資家である。投資家が求める利益率(資本コスト)と達成できぬ経営者は、本来退場すべきなのだ。とすれば、目の肥えた、質の高い投資家が集まる資本市場育成が必要であり、政府には不公正取引を許さぬ諸制度の整備、監視機能の充実といった地味な作業こそ求められているのである。
イノベーションを提唱した経済学者のシュンペーターは、「経済の駆動力は、企業家の創造的破壊にある」と言った(辻広雅文、『週刊ダイヤモンド』掲載)

