
No.3 市場の質
米国で銀行と証券会社を分離するグラス・ステイーガル法が制定されたのは1933年、第2次産業革命後、株式市場の大暴落から大恐慌へ発展する最中である。経営不振企業への融資回収のため、その企業に証券を発行させ一般投資家に売り捌く利益相反の濫用行為を禁止する、資本市場健全化の中核策だった。
「質の時代」のシステム改革」(矢野誠、岩波書店)によれば、過去、産業革命における爆発的技術革新は空前の経済活況を生む一方、経済システムが追いつけず、市場の質が劣化、情報の偏在、不透明な取引がはびこり、社会に大混乱をもたらす。第1次産業革命後の欧州では、資本家の搾取が横行、深刻化した。
経営危機の日本航空が最大で2000億円の公募増資を行う。引受け団から日興シテイ証券が降りるほど、その経営改善見通しは甘いのだが、何より問題なのは、みずほフィナンシャルグループを初め、大手金融機関は傘下銀行が巨額融資をしているにも関わらず、同様の傘下証券会社が引き受け、販売することである。銀行、証券会社間のファイアーウォールの存在をもって、証券取引法の利益相反禁止規定に触れない法的根拠とするのだろう。
だが、この半年間に起こった経済事件が提起したのは、法に触れなければいいのか、という問いだったはずである。ナショナル・フラッグを救うためという目的にしても、決して手段を正当化しない。日本航空に対する銀行の融資債権を放棄あるいは資本に転換(債務の資本化)してから引き受けるのが、金融機関として通すべき筋であろう。
第3次産業革命に擬せられるIT革命が進行する今、粉飾決算、インサイダー取引などの不祥事が国内外で噴出する。市場の質向上という至上命題を、歴史を学ばぬ金融家たちの倫理喪失が遠ざける。(辻広雅文、『週刊ダイヤモンド』 掲載)
「質の時代」のシステム改革」(矢野誠、岩波書店)によれば、過去、産業革命における爆発的技術革新は空前の経済活況を生む一方、経済システムが追いつけず、市場の質が劣化、情報の偏在、不透明な取引がはびこり、社会に大混乱をもたらす。第1次産業革命後の欧州では、資本家の搾取が横行、深刻化した。
経営危機の日本航空が最大で2000億円の公募増資を行う。引受け団から日興シテイ証券が降りるほど、その経営改善見通しは甘いのだが、何より問題なのは、みずほフィナンシャルグループを初め、大手金融機関は傘下銀行が巨額融資をしているにも関わらず、同様の傘下証券会社が引き受け、販売することである。銀行、証券会社間のファイアーウォールの存在をもって、証券取引法の利益相反禁止規定に触れない法的根拠とするのだろう。
だが、この半年間に起こった経済事件が提起したのは、法に触れなければいいのか、という問いだったはずである。ナショナル・フラッグを救うためという目的にしても、決して手段を正当化しない。日本航空に対する銀行の融資債権を放棄あるいは資本に転換(債務の資本化)してから引き受けるのが、金融機関として通すべき筋であろう。
第3次産業革命に擬せられるIT革命が進行する今、粉飾決算、インサイダー取引などの不祥事が国内外で噴出する。市場の質向上という至上命題を、歴史を学ばぬ金融家たちの倫理喪失が遠ざける。(辻広雅文、『週刊ダイヤモンド』 掲載)

