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No.2 安普請
 政策通、理論家で鳴る与謝野馨・経済財政担当相はアマ囲碁七段の腕前である。碁界では、間に合わせの薄い手、悪手を「安普請」(呉清源)と呼ぶ。

 その与謝野氏は中川秀直・自民党政調会長と組んで歳出・歳入一体改革を取り仕切り、二〇一一年の基礎的財政収支黒字化のための財源不足額を十六兆円強に絞り込んだ。年平均三%という高い成長率を前提に高水準の税収を見込んだゆえの数字だ。だが、経済学者によっては三〇兆円の不足と言う試算すらあり、楽観的に過ぎる。より問題なのは、不足額のうち一四兆円あまりを歳出削減で賄う計画の内容である。むろん、官にはあまりに無駄が多いから、歳出徹底削減は必須である。「小さな政府」「民でできることは民で」という政治スローガンは、一見正しい。

しかし、官がやらなくてもいいことばかりやっているからといって、官がなすべきことをしているとは限らない。例えば、金融システムの動揺や昨今の金融機関の不祥事、市場の未整備ぶりをみれば、金融庁や証券取引等監視委員会の増員強化は不可欠だ。格差社会の是正には、公教育の再構築が最優先だろう。だが、今回の歳出削減案では公務員数も教育費も単純一律カットである。地道なインフラ整備に手を抜けば、ひどく安普請の国ができあがる。被害を受けるのは後年世代である。今すべきは、政府の役割の再定義だろう。

 甘い試算、安易な削減策は、来年の参議院選挙を睨んで消費税増額を抑えたい与党の一心からだ。次期政権での重要ポスト確保のためなのか、政策名人の与謝野氏にしては、ずいぶんと安普請の手を打ったものである。(辻広雅文、『週刊ダイヤモンド』 7月15日号掲載)
放送時間
初回放送
月曜〜金曜 夜8:00〜8:55
再放送
月曜〜金曜
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