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No.62 社会保障「5つの安心プラン」という選挙対策のむなしさ
 なぜ、“緊急”なのだろう。


 福田首相直々の指示に基づき、政府は社会保障に関する“緊急“対策「5つの安心プラン」を決定した。約160項目に及ぶ施策に関して2009年度予算に反映するとともに、必要な法整備を急ぐという。

 だが、主要5分野である「高齢者政策」「医療体制の強化」「子育て支援」「非正規労働者の支援」「厚労行政の信頼回復」のそれぞれは、諸制度が絡み合うところに複雑な環境変化が影響する構造問題であり、“緊急”に対処すべき、あるいは対処しうるものではない。

 実際、それぞれの政府原案をのぞくと、画期的な解決方法が盛り込まれているわけでもなく、“検討課題“という記述が頻発する。政府が“検討課題とするときは、たいていの場合、審議会などで検討はするけれど実現は難しい、という意味である。

 例えば、高齢者政策に盛り込まれた、「在職老齢年金制度の見直し」と「最低保証年金の創設検討」である。

 「在職老齢年金制度」とは、年金受給者が働いて賃金を得ると、年金受給額がカットされるという制度である。当然、高齢者の就労意欲を低下させるわけで、65歳以上の雇用継続を産業界に働きかけている政府施策と矛盾するから、見直そうというわけだ。

 確かに、労働収入があるからといって年金をカットするのは、年金制度における負担と給付の適合原則に反しているわけで、実は厚労省も改善の必要があることはわかっている。だが、このカット分の総額は2兆円ほどにも上る。厚生年金保険料はおよそ20兆円だから、この制度を廃止してしまうと、計算上は保険料率を1%ほど上げなくてはならなくなってしまう。政策当事者として、身動きが取れないのである。

 どうすればいいか。年金の適合原則を崩さず、同時に、年金と労働収入に二つの収入合計のなかから適切な国庫への負担をしてもらうには、総合課税制度の導入が有用であろう。年金と所得を両方捕捉して、総合課税するのである。そのためには当然、年金制度と税制の一体改革が必要となる。何度も必要性が叫ばれ、だがいっこうに踏み出せない一体改革という難題に、政府与党はどれほど本気で取り組むつもりだというのだろうか。

 年金制度は、経済的に恵まれていない人でも最低限の人間らしい生活を担保するために存在する。したがって、「最低保証年金制度」も、当然導入すべき制度であり、この機能を備えていない先進諸国は例外である。

 だが、その例外である日本の年金は、社会保険方式である。社会保険方式とは、小額の保険料しか納めなかった受給者には小額の給付しかしない。早い話が、年金未納者は受給資格がないのである。となれば、どんな経済的弱者にも最低年金を保証しようとする制度は矛盾してしまう。社会保険方式のまま、この制度を組み込むのは極めて難しい。

 解決を図るには、基礎年金部分を税額方式に変更することが有効であろう。保険料ではなく税金で負担するのだ。これもまた年金と税制との一体改革であり、「社会保障に関する国民会議」も必要性を認めながらも、具体的スキームの記述に踏み込めなかった難問なのである。これを“緊急”施策と掲げたから実現可能だと考えるのは、よほどのお人よしだろう。

 視点を変えよう。「非正規労働者の支援」に関して、「最低労働賃金問題」の論議が続いてきた。労働者の保護政策と産業界とりわけ中小企業の反対論が対立し、有効な手立てが見つからない。この問題が難しいのは、政府が最低賃金を決定し、産業界に遵守を迫ると、雇用が失われたり、非合法の地下労働がまかり通りかねないところにある。労働者、企業側双方にデメリットが生じるのだ。

 だが、解決方法はある。労働市場に政府が介入することなく、最低労働賃金を上げる方法はある。「給付付き税額控除制度」の導入である。

 日本の課税最低限度額は、単身者の年収115万円(そもそも低すぎる!)、夫婦にこども2人の世帯ならば325万円である。現状では、これを下回った場合、所得税がゼロとなるだけである。これに対して、米国などで導入されている「給付付き税額控除」は、課税最低額を下回ると納めるべき税金がマイナスになったとして還付されるのである。

 時給700円で1日8時間、月25日働くと月収14万円である。税額控除分として5万円を国が給付すれば月収は19万円で、時給は250円アップすることになる。つまり、官民の協力で最低労働賃金は950円まで上がるのである。

 この問題もまた税制が深く関わっている。課税最低限の年収を下回る人々、とりわけ若者たちの所得を捕捉しなければならないから、税務行政は複雑になる。それを、社会保険庁と国税庁による年金、税の徴収業務の再編に結びつくと前向きにとらえることもできよう。

 いずれにしろ、「在職老齢年金」にしても「最低保証年金」にしても「最低労働賃金」にしても、国民に本当の安心をもたらすには、年金と税制が一体化した抜本改革を行わなければならない。それは、厚労省と財務省といった省庁間にまたがる問題である。

 今回の「5つの安心プラン」では、「厚労行政の信頼回復」のために、組織の抜本改革が行われるという。社会保険庁のあまりにずさんな体質ひとつとっても、厚労省の硬直的な組織、人事制度の改革が必要であることはいうまでもない。

 だが、今、厚労省に最も必要とされるのは、「財務省の管轄する税制などと一体、整合的に改革を進めるためにどう組織を改革するかという視点」だと、日本総合研究所の西沢和彦・主任研究員は言う。そのような視点は、「5つの安心プラン」にはいささかもない。

 あらゆる政策課題には、問題点と解決方法は出揃っているものだ。あとは、やるかやらないか、覚悟しだいなのである。

 その覚悟が一片も見当たらないのだから、この「5つの安心プラン」の”緊急“とは国民にとってではなく、政府与党にとって緊急なのであろう。要は、迫りくる総選挙対策のPR手段として新しい衣を被せたいのだろう。だが、衣の下に、鎧どころか、政治の愚かが透けて見える(敬称略、辻広雅文、『週刊ダイヤモンド』掲載)。
これまでの辻広雅文のプリズム
 米国の真の危機は、目の前で激しく軋む金融システム危機ではなく、中長期的に基幹産業たる金融産業が衰退し、それに伴って潜在成長率が低下していくことにあるのではないだろうか。
 いかなる企業も損失を生じ、赤字に転落しただけでは倒産しない。理屈の上では、たとえ債務超過に陥ったとしても、株価が暴落して無価値に近づいたとしても、資金繰りがつきさえすれば倒産しない。
 北朝鮮による拉致被害者家族や支援団体は、北朝鮮への制裁解除、テロ支援国指定解除の停止を求めて連日集会を開き、サミットに集った各国首脳たちにアピールし続けている。
「多重債務問題の本質は貧困にある」
 秋葉原通り魔殺人事件の加藤智大容疑者は、人材派遣会社・日研総業株式会社の社員として、関東自動車東富士工場の塗装ラインに派遣されていた。
放送時間
初回放送
月曜〜金曜 夜8:00〜8:55
再放送
月曜〜金曜
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日曜〜金曜
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金曜深夜3:00〜
 ・月曜分 3:00〜
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 ・火曜分 3:00〜
 ・水曜分 4:00〜
 ・木曜分 翌朝5:00〜
 ・金曜分 翌朝6:00〜
レギュラー出演者
金慶珠
金慶珠
(月曜担当)
東海大学准教授
上杉隆
上杉隆
(火曜担当)
ジャーナリスト
宮崎哲弥
宮崎哲弥
(水曜担当)
評論家
葉 千栄
葉 千栄
(木曜担当)
東海大学教授
辻広雅文
辻広雅文
(金曜担当)
ダイヤモンド社
論説委員
波多野健
波多野健
(月サブキャスター)
重信メイ
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(火・木サブキャスター)
堤未果
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(水・金サブキャスター)