
6/22(日)朝9:30〜10:00
「天空の赤いポンチョ」
〜インカの秘薬が地球を救う〜
南米ボリビアの奥地で、1000年以上も前からアンデスの人々の健康を守ってきた医者、カヤワヤ。神聖な大地の生命を象徴するという赤いポンチョを身につけ、旅をしながら治療にあたる、アンデスの民にとって赤ひげのような存在です。インカ時代、このあたりは「医者の国」と呼ばれ、19世紀末のパナマ運河建設の際には、マラリアに苦しむ労働者の多くの命を救いました。
「医者の国」の中心、チャラサニには、町で一番と評判の高いアウレリオ・オルティスさんの一家が住んでいます。明日から治療の旅に出るとあって、この日は家族総出で薬草採りです。ここはわずかなジャガイモやトウモロコシしか育たない痩せた土地でも、高山から亜熱帯まで3種類の異なる気候を併せ持つため、薬草に向く生命力の強い植物が育ちます。作物の代わりに、200種類を超える良質な薬草に恵まれるのです。この日集めた薬草を煎じ、オルティス家伝統の万能薬が作られました。カヤワヤの医術は一子相伝。口伝えで一族の男子に受け継がれます。たった一人の跡継ぎ、16歳のホセは跡を継ぐかどうか、まだ迷っています。オルティスさんは今回、ホセの学校の休みを利用して旅に連れて行くことにしました。
カヤワヤは、以前に治療した患者を訪ねながら、患者の求めに応じて治療します。時には国境を越え、遠くはチリやアルゼンチンにまで全て徒歩で旅を続けます。歩くこと6時間、最初の目的地の小さな村は不作続きで、みな慢性的な栄養失調だといいます。用意してきた薬湯を施しました。次の村へ向かう途中では、火傷を負った15歳の少女の急患のため、急遽、森へ入り、炎症を鎮める効果があるというミミズと、消毒用の薬草を集めました。4日後の訪問を約束し、やっと目的の村へ着いたときには夜の7時を過ぎていました。以前、足を治療した患者を訪ね、休息も取らずに患者の話を聞き始めたオルティスさんは、疲れた顔をしているホセを怒りました。真剣に患者に向き合う父の背中をホセは黙って見つめていました。
カヤワヤは病気やけがが完治するまで、報酬をもらいません。旅の食事と宿は患者の家で、報酬も患者が払える分しか受け取りません。生活は豊かではありません。中学卒業を前に、ホセは同級生のように町の高校へ進学するか、カヤワヤを継ぐか、迷っていました。カヤワヤにならずに工場勤めを選んだ友だちもいます。
一方、自然を知り尽くしたカヤワヤの伝統医療に、現代医学が注目しました。薬用植物化学のアルベルト・ヒメネス教授は、難病のリーシュマニア症の新薬の開発に、カヤワヤの使うエバンタという木の樹皮から採ったエキスを用いました。既に、治験段階に入っており、薬が完成すれば、世界で150万人の命を救うことができるといいます。さて、親子の旅は4日目、再び火傷の少女を訪ねました。回復してきた少女はやっと笑顔を見せるようになり、ホセの心の中でも何かが動いたようです。初めて自分から手伝いを買って出ました。父と子の6日間の初めての治療の旅は、5つの村で15人を治療し、90キロを歩いて終わりました。「死ぬまでカヤワヤでいたい」という父に続き、息子も一歩を踏み出そうとしています。
ところが、カヤワヤの伝統継承には、さらに心配なことがありました。南米各地で続く、豪雨や干ばつなどの天候異変で、カヤワヤの命とも言うべき薬草が次々と枯れているのです。オルティスさんは100年、200年後の子供たちのために何ができるか、考え始めました。
ナレーター:緒形 拳
〜インカの秘薬が地球を救う〜
南米ボリビアの奥地で、1000年以上も前からアンデスの人々の健康を守ってきた医者、カヤワヤ。神聖な大地の生命を象徴するという赤いポンチョを身につけ、旅をしながら治療にあたる、アンデスの民にとって赤ひげのような存在です。インカ時代、このあたりは「医者の国」と呼ばれ、19世紀末のパナマ運河建設の際には、マラリアに苦しむ労働者の多くの命を救いました。
「医者の国」の中心、チャラサニには、町で一番と評判の高いアウレリオ・オルティスさんの一家が住んでいます。明日から治療の旅に出るとあって、この日は家族総出で薬草採りです。ここはわずかなジャガイモやトウモロコシしか育たない痩せた土地でも、高山から亜熱帯まで3種類の異なる気候を併せ持つため、薬草に向く生命力の強い植物が育ちます。作物の代わりに、200種類を超える良質な薬草に恵まれるのです。この日集めた薬草を煎じ、オルティス家伝統の万能薬が作られました。カヤワヤの医術は一子相伝。口伝えで一族の男子に受け継がれます。たった一人の跡継ぎ、16歳のホセは跡を継ぐかどうか、まだ迷っています。オルティスさんは今回、ホセの学校の休みを利用して旅に連れて行くことにしました。
カヤワヤは、以前に治療した患者を訪ねながら、患者の求めに応じて治療します。時には国境を越え、遠くはチリやアルゼンチンにまで全て徒歩で旅を続けます。歩くこと6時間、最初の目的地の小さな村は不作続きで、みな慢性的な栄養失調だといいます。用意してきた薬湯を施しました。次の村へ向かう途中では、火傷を負った15歳の少女の急患のため、急遽、森へ入り、炎症を鎮める効果があるというミミズと、消毒用の薬草を集めました。4日後の訪問を約束し、やっと目的の村へ着いたときには夜の7時を過ぎていました。以前、足を治療した患者を訪ね、休息も取らずに患者の話を聞き始めたオルティスさんは、疲れた顔をしているホセを怒りました。真剣に患者に向き合う父の背中をホセは黙って見つめていました。
カヤワヤは病気やけがが完治するまで、報酬をもらいません。旅の食事と宿は患者の家で、報酬も患者が払える分しか受け取りません。生活は豊かではありません。中学卒業を前に、ホセは同級生のように町の高校へ進学するか、カヤワヤを継ぐか、迷っていました。カヤワヤにならずに工場勤めを選んだ友だちもいます。
一方、自然を知り尽くしたカヤワヤの伝統医療に、現代医学が注目しました。薬用植物化学のアルベルト・ヒメネス教授は、難病のリーシュマニア症の新薬の開発に、カヤワヤの使うエバンタという木の樹皮から採ったエキスを用いました。既に、治験段階に入っており、薬が完成すれば、世界で150万人の命を救うことができるといいます。さて、親子の旅は4日目、再び火傷の少女を訪ねました。回復してきた少女はやっと笑顔を見せるようになり、ホセの心の中でも何かが動いたようです。初めて自分から手伝いを買って出ました。父と子の6日間の初めての治療の旅は、5つの村で15人を治療し、90キロを歩いて終わりました。「死ぬまでカヤワヤでいたい」という父に続き、息子も一歩を踏み出そうとしています。
ところが、カヤワヤの伝統継承には、さらに心配なことがありました。南米各地で続く、豪雨や干ばつなどの天候異変で、カヤワヤの命とも言うべき薬草が次々と枯れているのです。オルティスさんは100年、200年後の子供たちのために何ができるか、考え始めました。
ナレーター:緒形 拳

