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知られざるアジアNOW
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タイで見つけたポンあられ
40年の歳月と6000キロの時空を超えて

懐かしいポップライス.bmp
タイの中部アユタヤは14世紀から18世紀にかけて栄えた古都だ。
17世紀の初めに日本人町が形成されたアユタヤは日本人にも人気の観光地だ。
多いときには2000人の日本人が武将や商人として活躍していたといわれ、アユタヤ王朝に重用された山田長政はシンボル的な存在だ。
日本人町には展示場や公園が造られている。
今年は日泰修好120年だが、20年前、修好100年を記念して公園が造られたものだ。
それ以前は何もない原っぱだった。
メナム川の支流の岸に日本人町はあったが、当時は木と竹で家が造られ、後にアユタヤ王朝の政争に巻き込まれ焼き討ちにあったため日本人町は何もない原っぱのはずで、わずかに出土する古伊万里の破片だけが当時を偲ばせるだけだ。
日本人観光客はほとんど訪れないが、フランスの古い地図によれば日本人町の対岸はポルトガル人町で教会や墓の痕跡が残っている。
火縄銃、「種子島」を日本に伝えたのは帆船に乗ってやってきたポルトガル人だ。
日本人は最初ポルトガルの帆船に乗ってアユタヤにやってくるようになり、やがて御朱印船貿易などで日本人の数が増えたので、対岸に移ったのではないかなどと想像が膨らむ。
貿易港として栄えたアユタヤも1767年、ビルマの度重なる攻撃の前に遂に亡国の悲運に見舞われ、王宮も寺院も徹底的に破壊され、現在は崩れた王宮や寺院が当時の栄華の面影を残しているだけだ。
当時の戦闘はもっぱら象が使われた。
象には3人の兵士が乗る。
先頭の兵士は象使いだ。
象の首あたりにまたがり、耳の後ろを蹴って象に指令を与える。
真ん中の兵士は長刀を持って実際に敵に切り込む、そして最後尾に低い姿勢で乗り込む兵士は敵から象の足を守る。
観光地アユタヤは時々象の戦闘シーンを実際に再現する観光キャンペーンを行う。
山田長政も加わったかもしれない象軍団の戦闘、同じ日本人として懐かしさを感じ取材に出かけた。
象が暴れだし観客にケガをさせるようなことがないよう丸太で組んだ仮設スタジアムが造られ、その中で10頭ほどの象軍団がビルマ軍アユタヤ軍に別れて戦闘シーンを再現する。
さぞかし勇壮な戦闘シーンになるだろうという期待は見事に裏切られた。
開発が進むタイでは年々象の数が減っており、50年前は10万頭といわれた象も今では野生を含め5千頭以下になってしまった。
従って希少な象に怪我をさせないよう、象軍団同士の激突は避け、象を守る兵士同士の戦闘演技がほとんどだ。
同行したカメラマンも私も取材する気力がなえ、帰ろうとしたとき、懐かしい香りが漂ってきた。
焦げるような、炒るような香りだ。
しかし、何の香りであるか思い出せない。
仮設スタジオの裏手に象の戦闘シーンを見に来た観光客を相手にする土産物屋が店を広げている。
風船やお面など子供相手の店が多く、日本の神社の境内でよく見る屋台のようだ。
香りはその土産物屋の奥から漂ってきている。
近づいてみると小太りのおばさんがドラム缶のようなものを炭で暖めている。
しばらくするとドラム缶の蓋を一気にあけた。
すると真っ白なポップライスがこぼれ出てきて、同時に懐かしい香りが広がった。
その瞬間40年程前の記憶がよみがえった。
終戦直後、日本が食糧危機に瀕していたとき、タイが日本にコメを供与してくれた。
90年代中ごろコメの不作で日本政府がタイ米を輸入したニュースはまだ記憶に新しいが、そのときも炊いたタイ米は日本人の口に合わなかった。
終戦直後、寄贈されたタイ米も炊かずにポップライスにして子供のおやつにした。
タイ米が配給されるタイミングを見計らってポップライスを作る職人が回ってくる。
当時、小学校の低学年だった私は母親に言いつけられ、配給されたタイ米と5円を持ってポップライスを作ってもらっていた。
ポップライスが出来上がって、機械の蓋を開けるとき「ボン」とかなり大きな音がすることから、ポップライスは「爆弾あられ」と呼ばれていた。
いかにも終戦直後の呼び方だ。
無論それから何度もポップライスを食べたことはある。
しかし、日本米で作ったポップライスは香りが違う。
日本は急速に食糧事情がよくなり、タイからのコメの供与も止まり、いつのまにかタイ米でできたポップライスの香りを忘れていた。
その香りが40年の歳月と6,000キロの時空を超えてよみがえった。
400年前の日本人にもゆかりの象による戦闘シーンの取材は失敗したが、40年前の懐かしい香りに遭遇できた。
20代後半の日本人カメラマンとタイ人の助手は取材に失敗したのになぜ私が上機嫌なのか理解すべくもなかった。
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放送時間
初回放送
朝ジャ!
水曜 朝6:40〜6:55
再放送
水曜 朝7:40〜7:55
木曜 朝7:10〜7:25
金曜 朝7:40〜7:55
土曜 朝5:25〜5:40
日曜 朝5:25〜5:40
レギュラー出演者
直井謙二
直井謙二
キャスター
84年から01年の17年間のうち13年間をアジア諸国に滞在。アジア激動の時代にクーデター、災害、事件事故、国際会議を取材した。
帰山由香
帰山由香
アシスタント