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永田町の舞台裏 07.2.23号
不毛な知事選を憂う

 2月16日、都内某所。
 石原慎太郎東京都知事をスタッフが囲んだ。長男の伸晃、三男の宏高ら、いわゆる石原ファミリーの選対会議だったが、こうした集まりに久々に参加した顔があった。
 浜渦武生―。
 長く石原の秘書として仕え副知事も務めたが、一昨年、都議会自民党との対立の中で、石原自身が浜渦を解任したのだった。
「浜渦斬りを進言したのは長男の伸晃。元々、ファミリーにとっては、浜渦が父親の信頼を得て何でも決まっていくことが面白くなかった。浜渦を切り離したかった」(ファミリーをよく知る事情通)
 しかし、副知事として辣腕を振るっていた浜渦は、実は都庁内で役人やうるさ型の都議会自民を抑える重しになって石原を守っていたのだった。浜渦が去り、石原は伸晃や自民党のペースにすっかりはめ込まれてしまった。この違和感に、石原自身は昨年、浜渦を再び都参与として呼び戻したというのが経緯だ。
 場面は、選対会議に戻る。
 伸晃と浜渦は、会議中、目も合わせようともしない。だが、石原の信頼は完全に息子ではなく、浜渦に寄せられていたのだ。
 知事選に向けて敵なしと言われていた石原は、昨年来噴き出している公費支出問題で支持率も下がるなど苦境に立たされていた。
 実は、選対会議より前の1月中旬。早くも石原は浜渦に頼んだ。
「今度の知事選を仕切ってくれないか」
「私よりもご子息がおられるじゃないですか」
「あいつらにできるわけがない」
 浜渦は、石原が衆議院議員を引退して以来、無党派を演出すべく貫いてきた。来る者は、民主であろうと公明であろうと拒まず去る者は追わなかった。石原を誇りある孤高な政治家として存在感を示そうとしてきたのだった。
 選対会議で浜渦は、
「今度の選挙はただでさえ厳しい。さらに一党一派に支持されて戦うのでは無党派層の票もさらに逃げてしまう。原点に返るべきだ」
という考えを示した。
 石原はこれを受け入れた。そして会議終了後のぶら下がり会見となったのだ。
「元々無党派でやってきた。今回も政党の推薦は受けずに戦いたい」
 伸晃らファミリーVS浜渦の主導権争いは、とりあえず浜渦に軍配が上がった瞬間だった。

 東京都知事選挙が迷走している。
 元々、石原3選を画策したのは、都議会自民党だ。
「菅(直人 現民主党代表代行)が知事選を狙っている。菅に勝つには石原しかいない」
 そこで、宏高の総選挙での応援や、伸晃を巻き込むことで石原に対する発言力を強め、3選を決めさせたのだった。
 当時、都議会自民幹部はこう話した。
「宏高や伸晃は人質だ。彼らを抑えている以上、息子を溺愛している石原さんは我々に協力せざるを得ないはずだ。高齢という心配もあるが、ならば今度当選して2年後ぐらいに健康を理由に辞めればいい。後釜は伸晃でいいじゃないか。2年後なら都議選もあってダブル選挙になる。菅はもうそのころは過去の人だ。とにかく菅を勝たせないために石原3選しなかい」
 ところが、政局が一変し、民主党が小沢代表の下で息を吹き返した上に、小沢に万が一のことがあれば再び永田町で菅の時代がくる可能性も出てきた。郵政選挙のあと、もう永田町での出番はない、と、知事選に心が動きつつあった菅も、出馬の動きが止まってしまった。
 また民主党では、海江田万里(前衆議院議員)も知事選への意欲を持っていた。ところが、衆院東京1区のライバル・与謝野馨(自民)の体調がすぐれず、次期選挙で再び勝てるチャンスを感じ取るようになった。海江田もまた知事選から外れた。
「菅が出るという想定で石原を担いだのに、菅もない、海江田もない。しかし、そこへきて、石原さんの公費支出問題が出てきて、我々の支援者からは、そんな石原さんを応援するのかという批判さえもらうことになってしまった。まったく、ぐちゃぐちゃになってしまった」(前出幹部)

 民主党も、首都の顔を決める重要な選挙で、その動きは不甲斐ない。
 昨年秋以降、石原公費問題が噴出し、民主党に追い風が吹きはじめたにもかかわらず、候補者選びが進まなかった。
 12月に入った頃から、東京選出の国会議員や党幹部らが相次いで候補について口にしはじめた。
「久米宏がいい。反権力だし、無党派層にはいい」
「筑紫哲也はどうか」
「女性がいい」
 ところが、こうした議員個人の勝手な発言がマイナスに働いた。名前が出ては断られるということを繰り返すうちに、盛り上がるどころか、最後に出馬する候補には、結局なり手がいなくて妥協したというイメージさえついてしまうことになる。
 民主党の選対幹部が言う。
「ここまできてしまって言うのもなんだが、知事選で誰もリーダーシップを発揮していない。本来なら小沢さんだが、東京は菅さんのお膝元だから遠慮がある」
逆の見方もある。
「菅さん任せということは、もし負ければ、『菅さん、あなたの責任ですよ』という小沢さんから菅さんへのプレッシャーでありいじめじゃないか」(民主党東京選出議員)
 いずれにしても、追い風を味方にするチャンスを生かしきっていない。
 都知事選挙は、不毛な様相を呈し始めている。
 
 統一地方選挙は、有権者にもっとも身近で生活に直結する選挙である。同時に、今年夏の最大の政治決戦ともいえる参院選の前哨戦でもある。
 選挙の陰には、個人の思惑、党利党略、派利派略があることは否定しない。しかし、すっきりとした出馬と主張、そして正々堂々の政策論争を有権者に見せ、政治選択の機会を与えて欲しいものだ。
                                            【文中敬称略】(S) 
  
 ※なおこのコラム担当のSは今回まで。以後S.Aが担当します。長くご愛読ありがとうございました
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