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永田町の舞台裏 07.02.03号
「問題発言」の別の問題

 少子化に触れた講演で、「女性は子どもを産む機械」と言った厚生労働相の柳沢さんが“炎上”している。野党はもちろん、与党の一部からも辞職論が噴出して国会は大紛糾、柳沢さんの地位も風前の灯火のように見える。

 さて、柳沢さんは何と発言したのか。新聞報道などによると、概略はこうだ。2030年に年金はどうなっているかと問題を設定して、そのころ出産適齢期の女性はいま7、8歳になっていると指摘。「あとは、『産む機械』って言っちゃなんだけど、装置の数が決まっちゃったってことになると、機械って言ってごめんなさいね。あとは産む役目の人が、一人頭でがんばってもらうしかない」と言ったという。
 確かに不用意だ。反発は主に2種類。「子どもを産まない、産めない女性は役に立たない機械か」(社民党の辻元さん)などといった、様々な事情を抱える女性への冒涜だというものと、「女性たちは、年金の財源を産む機械ではありません。お国のために子どもを産むのでもありません」(社民党の福島さん)というような「個人より国家」を先に据える思考への異議申し立てだ。

 もちろん、そう批判されて仕方ない。ただ、「機械」という比喩を使う際にすでに柳沢さんは不適切だとの考えが頭によぎったのか、謝りながら話している。お国のために産め、というのも舌足らずではあるが、年金を預かる責任者としてはある意味率直な思いとは言えないか。
 しかし、永田町では柳沢さんの辞職は必要ないとする声は驚くほど少ない。野党は夏の参院選での与野党逆転を狙って、通常国会冒頭という政治決戦の緒戦で主導権を狙う。与党は防御を鉄壁にしたい。本当に柳沢発言は職をただちに辞すほどの致命的なものなのかという議論より、国会対策、世論対策に主眼をおいた攻防が続いている。

 思い出すのは88年、当時自民党政調会長だった渡辺美智雄さんの「黒人は破産してもケロケロケロ、アッケラカのカー」発言である。当時は柳沢さんのケースと同じく、「差別発言」だと米国などにも紹介され、ボイコットなども起きた。ミッチーはこのとき辞職などに追い込まれたわけではないが、本人はひどく反省し、その後、アメリカ南部の黒人だけの医学校に5年間にわたって毎年10万ドルの寄附をした。
 これを聞いたとき、正直いい話だと思ったが、柳沢発言もこんな展開をたどればいいと思う。「辞めろ」「辞めない」だけの攻防はいかにも無益ではないか。野党は国会で柳沢さんと何時間でもじっくり討論すればいいし、メディアは今後の柳沢さんの厚生労働行政がやっぱり不見識なのか、を検証すればいい。それでは事足りないのだろうか。

 一方、業界には柳沢さんより問題だと言われている閣僚がいる。「(米国はイラクに)大量破壊兵器がさもあるかのように戦争に踏み切ったが、判断が間違っていたのではないか」「米国に『あまり偉そうなことを言ってくれるな。(沖縄県)知事と一生懸命話しながらやっているからもうちょっと待ってくれ』と言っている」などと“放言”している防衛相の久間さんだ。
 日米関係を壊す、閣内統一を乱す、と閣僚や与党が怒るのは半ば当然だが、野党やメディアが問題視するのが不思議だ。久間さんの発言のどこが間違っているのだろうか。イラク戦争が誤りだったのはブッシュ大統領だってある程度認めている。日米政府で決めたから沖縄はこれを飲みなさい、という理屈で普天間飛行場の移設が好転するはずはないだろう。米国や安倍さんを慮って発言を控えるのが閣僚だと言うのか。久間さんの言う通りだ、ブッシュや安倍は反省しろ――と言うのが野党やジャーナリズムの役割ではないか。

 政治家の「問題発言」というのは、それだけで十分問題だが、その扱われ方、伝えられ方にも相当に問題がある。(O)
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