
永田町の舞台裏 06.10.6号
生き方が再チャレンジ
「集団就職?今の若い人は知らないでしょうね」
菅義偉(総務相)は昭和23年、秋田県の農家の長男として生まれた。生活は決して裕福ではなかった。高校を卒業と同時に菅は例外なく同級生らとともに集団就職列車に乗り込み上京した。菅が住み込みで働いたのはダンボール工場。
「それは大変だった。苦労しましたよ。一日中ダンボールを運んでばかり。夢を抱いて上京したけど現実はちがいましたね。一番思い出したくない青春ですよ」
苦笑しながらも、菅は当時の思い出、朝から晩まで働き尽くめだったこと、その後一念発起して法政大学を受験し、働いて学費と生活費を稼ぎながら勉強に打ち込んだことなどを語ってくれた。
安倍新総裁が選出され、組閣人事が行われるちょうどその間の9月22日。菅義偉は、私がプロデューサーを務める番組に出演してくれた。
菅は、安倍総裁誕生へ流れを作った超派閥の再チャレンジ議連の仕掛け人だ。安倍の信頼は、過去北朝鮮の経済制裁や党改革検証・推進委員会を通じて勝ち得ていた。
しかし、番組は、菅のこうした政局のキーマンとしての働きというより、むしろその苦労人としての人間ドラマにスポットを当てようという狙いだった。
「集団就職して、苦労して、自力で大学に行って、また働いて…。そうするうちに世の中を動かしているのは政治だと思うようになった。しかし、自分には地盤も看板もカバンもない。そこで大学の就職課に行って、OBの政治家を紹介してもらい、秘書にして欲しいと飛び込んでいった。そりゃ、認められるようにと必死で働きましたよ。(笑)お茶汲みから運転まで…。ほかの秘書が嫌がるようなことは全部やりました。その働きを認められて小此木彦三郎先生(故人、元衆議院議員)の秘書になり、以後横浜市議を経て国政に出たんです」
この日の菅には安倍総裁誕生直後という達成感があったのだろう。口はいつになく滑らかで、テレビで明かす苦労話はどれも初めてのものばかり。同行してきた秘書すら「聞いたことがなかった」という下積み時代の話を披露してくれたのだった。
菅の苦労は、彼の政策にも反映されている。再チャレンジはもちろん、振り込め詐欺対策、マンション問題、年金問題と生活者のテーマが多い。
番組出演の日は組閣直前ということもあって、私は控え室で安倍から役職について打診があったかどうかを訊ねてみた。菅の答えはこうだった。
「安倍さんが総裁選に選ばれた日にメシを食った。まったく何も言わなかったし何も聞かなかった。そりゃいろんな要職に就きたいとは思うけど、まあ、補佐とか代理とか陰で支えるところで十分」
苦労人らしく、下働きも一向に構わないという自然体の答えだった。
「菅さんの生き方そのものが再チャレンジだ」
と、菅と行動を共にしている若手議員は言う。集団就職で上京して以来、自らの力で仕事を変えながら学びながら、今政治家の道を歩いている。
安倍政権の特徴は、二世三世など世襲議員や官僚出身者が目立つことだ。その安倍は、自らの対極にある菅のような人材も好むと言われる。
苦労人・菅総務相の能力や胆力に注目したい。 【文中敬称略】 (S)
「集団就職?今の若い人は知らないでしょうね」
菅義偉(総務相)は昭和23年、秋田県の農家の長男として生まれた。生活は決して裕福ではなかった。高校を卒業と同時に菅は例外なく同級生らとともに集団就職列車に乗り込み上京した。菅が住み込みで働いたのはダンボール工場。
「それは大変だった。苦労しましたよ。一日中ダンボールを運んでばかり。夢を抱いて上京したけど現実はちがいましたね。一番思い出したくない青春ですよ」
苦笑しながらも、菅は当時の思い出、朝から晩まで働き尽くめだったこと、その後一念発起して法政大学を受験し、働いて学費と生活費を稼ぎながら勉強に打ち込んだことなどを語ってくれた。
安倍新総裁が選出され、組閣人事が行われるちょうどその間の9月22日。菅義偉は、私がプロデューサーを務める番組に出演してくれた。
菅は、安倍総裁誕生へ流れを作った超派閥の再チャレンジ議連の仕掛け人だ。安倍の信頼は、過去北朝鮮の経済制裁や党改革検証・推進委員会を通じて勝ち得ていた。
しかし、番組は、菅のこうした政局のキーマンとしての働きというより、むしろその苦労人としての人間ドラマにスポットを当てようという狙いだった。
「集団就職して、苦労して、自力で大学に行って、また働いて…。そうするうちに世の中を動かしているのは政治だと思うようになった。しかし、自分には地盤も看板もカバンもない。そこで大学の就職課に行って、OBの政治家を紹介してもらい、秘書にして欲しいと飛び込んでいった。そりゃ、認められるようにと必死で働きましたよ。(笑)お茶汲みから運転まで…。ほかの秘書が嫌がるようなことは全部やりました。その働きを認められて小此木彦三郎先生(故人、元衆議院議員)の秘書になり、以後横浜市議を経て国政に出たんです」
この日の菅には安倍総裁誕生直後という達成感があったのだろう。口はいつになく滑らかで、テレビで明かす苦労話はどれも初めてのものばかり。同行してきた秘書すら「聞いたことがなかった」という下積み時代の話を披露してくれたのだった。
菅の苦労は、彼の政策にも反映されている。再チャレンジはもちろん、振り込め詐欺対策、マンション問題、年金問題と生活者のテーマが多い。
番組出演の日は組閣直前ということもあって、私は控え室で安倍から役職について打診があったかどうかを訊ねてみた。菅の答えはこうだった。
「安倍さんが総裁選に選ばれた日にメシを食った。まったく何も言わなかったし何も聞かなかった。そりゃいろんな要職に就きたいとは思うけど、まあ、補佐とか代理とか陰で支えるところで十分」
苦労人らしく、下働きも一向に構わないという自然体の答えだった。
「菅さんの生き方そのものが再チャレンジだ」
と、菅と行動を共にしている若手議員は言う。集団就職で上京して以来、自らの力で仕事を変えながら学びながら、今政治家の道を歩いている。
安倍政権の特徴は、二世三世など世襲議員や官僚出身者が目立つことだ。その安倍は、自らの対極にある菅のような人材も好むと言われる。
苦労人・菅総務相の能力や胆力に注目したい。 【文中敬称略】 (S)



